年末のあわただしい時期、十二月三十日の北海道新聞朝刊に、「首相メディアを選別 自論展開へ出演テレビ局に偏り」の見出しの囲み記事が載った。その書き出しは
――安倍晋三首相は今年、集団的自衛権行使を可能にした安全保障関連法や環太平洋連携協定(TPP)参加などについて、国民への「丁寧な説明」を強調してきた。ただ実際は、テレビ出演は特定の放送局に偏り、記者会見の回数も減少。安保関連法案などで突っ込まれるのを警戒したとみられ、一方的に発信する傾向を強めた1年だった。(引用終わり)
記事を要約すると、首相が出演した報道・情報番組はフジテレビ、日本テレビ、NHKの三局と系列局だけ。歴代首相は、政権によるメディア選別を自ら戒めるために各局順番に出演するルールを内閣記者会との間でつくっていたが、第二次安倍政権発足以降、首相の好みで出演する番組を決めるようになった。
十一月、韓国での日韓首脳会談を終えて帰国した首相は、羽田空港からフジテレビに直行し、BSフジの番組に生出演。歴代首相が慣例にしていた首脳会談後の記者会見は行わず、居心地のいいテレビ局で一時間にわたって、自画自賛の外交成果をしゃべりまくったそうな。
と、ここまで書いてきて、ふと、本紙一月一日号、「こどもの本棚」元旦特別編に、中学校教諭の石川晋さんが紹介した一冊、「世界のシェー!!」(平沼正弘・著、理論社)の書評を思い出した。石川さんは、平沼さんが世界を旅して、赤塚不二夫の漫画「おそ松くん」に登場するイヤミの得意のポーズ「シェー」を現地の人にやってもらい(シェーインストラクターまで同行させて)、その写真を撮るという、まことに馬鹿馬鹿しい行為が、実に痛快で、哲学的でさえある、と言う。そして、「こういう馬鹿馬鹿しさが、今ぼくらの国に必要だよなと、くそ真面目に考えてしまう、ぼくもこの国を覆うシリアス病に感染中か…」と書く。そうだよなぁと思う。それにしても、一国の首相たるものが、好き嫌いを隠さない品のなさって、まったく「シェー!!」だよなあ、ハハハ。
さて、昨年十月、八十歳で他界した長原實さんを中心とする、旭川に公立「ものづくり大学」の開設を目指す市民の会(伊藤友一・会長代行)が仮称として提案した「旭川市立 北海道ものづくり大学」の話である。
(工藤 稔)
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