六十五歳になって、初めて分かる自分がある。春の陽気の下で、玄関前の厚い氷をツルハシでパカッと割った瞬間、ああオレって男なんだ、と感じる。これって、マサカリで薪をパッカーンって割った時の感覚に似ている。だから世のオジサンたちって、氷割りや薪割りに精を出すんだな。変な出だしですみません。

 そもそもの話だが、公文書なり、公的な交渉過程の記録って、こんなに勝手に破棄されたり、気ままに消去されて良いものなのだろうか。南スーダンの国連平和維持活動(PKО)に派遣された陸上自衛隊の「日報」を巡り、情報の隠蔽だの、稲田朋美防衛大臣の資質だのと騒がれている。自衛隊員の命に関わるPKО活動の貴重な記録が、保存期間も定められず、参考にもされず、担当者の判断で捨てられていいものなのか。

 森友学園が国有地を破格の安値で手に入れた事件も同じ。財務省のお役人も、麻生太郎財務大臣も、交渉経過を記録した文書は残っていない、と当たり前のような顔をして白を切る。土地の売り買い、しかも大臣個人のものではなく国有地、国民の財産の売り買いだぜ。どんな交渉があって売買が成立したか分かりませんなんて、あり得るか?

 この国は、独裁国家になりつつあるかに映る。十四日付読売新聞の一面トップの見出しは、「残業『月100時間未満』で決着」「繁忙期上限 首相、労使に要請」。労働者の残業時間まで安倍総理が決める、らしいのだ。経団連と連合のトップが、首相のご意見を受け入れて一件落着。そう言えば消費税の増税を再延期する決定もそうだった。国会で議論もしていないのに、安倍首相が「これまでのお約束とは異なる、新しい判断」なんて、例によって意味不明の御託を並べた時点で、延期決定よ。

 十七日付北海道新聞夕刊によると、安倍昭恵・首相夫人が、森友学園の園長さんに百万円を寄付したという話を官房長官が「安倍事務所を通じて確認したところ、領収書などの記録もなく、夫人個人としても寄付を行っていないということだ」と記者会見で否定したという。お役人五人の支援を受ける「私人」にとっても、やっぱり記録がないのは良いことなのだ。枕はここまで。

 

(工藤 稔)

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