四月三十日火曜日、夜中に目が覚めて本を読んだりしたものだから、ちょっと寝過ごして朝七時過ぎに起き出すと、家人が「平成最後のおはようございます、です」と挨拶する。私は「平成最後のお寝坊です」と返して笑った。この「まくら言葉」をどれほど聞かされたろう。改元でこれほど大騒ぎできるのは、この国はよほど平和なのだと、へそ曲がりオジサンは逆に怖くなる。近未来にとんでもない危機が待っているのではないかと勘ぐったりして。

 友人でもある読者から、メールが届いた。私と同じ感覚を覚えているらしい。以下。
 ――良い天気が続きますが、貴兄は、そろそろ畑の準備ですかね。今年はどんな夏になるのでしょうか。

 それにしても、令和だかなんだか知らないけれど、日本中、騒ぎすぎではないですかね。象徴に過ぎないはずの天皇の代替わりごときに、何をそう騒ぐのでしょうか。誰かが仕掛けた、何か〝大きな意図〟があることを強烈に感じます。

 「平成、最後! 平成、最後!」そして「新たな時代、令和!」の連呼。マスメディアや広告会社のあおり宣伝、特別番組のオンパレードも、ものすごいですね。

 かのトランプが、「日本人にとって、そんなに重要なことなのか?」と安倍に聞いたとも伝えられていますが、いつの間にか、この国は再び天皇制の国になっていたのかと錯覚するほどです。

 それにしても、安倍がトランプに「貴国のスーパーボールの何倍も大事なことだ」と説明したとかしないとか。彼のアホさ加減も、ここに極まれりですな。

 五月になった途端に、安倍ちゃんが、またうれしそうな顔して、テレビに露出し続けるんだろうなあと思うと、ほんとうにイヤになっちゃいます。やれやれです。(後略・引用終わり)

 憲政史上初の十連休という背景もあるのだろうが、新聞は「平成」と「令和」の大きな文字ばかりが目立った。題字を見ないと朝日だか、読売だか、毎日だか区別がつかない感じ。私には日経だけが冷静な紙面だった印象がある。五月一日の一面、朝日の「天声人語」にあたる「春秋」は、「こんにちは令和さん。1カ月も前から姿をお見かけしていましたが…」で始まる。さわりを引用しよう。

 ――(前略)NHKは「ゆく年くる年」ならぬ「ゆく時代くる時代」を朝から放送し、番組の宣伝で「渋谷交差点熱狂生中継」とあおっていましたね。でも、じつはお祭り騒ぎの裏側で危機が迫っています▼赴任早々申し上げるのも恐縮ですが、少子高齢化、人口減を克服する道は見えず、企業は昭和の成功物語にしがみつき、世界の中での存在感は低下する一方です。来年は東京五輪、6年後には大阪万博と祝祭が続きます。しかし、昭和の焼き直し的なイベントにかまけ、厄介事を先送りしたままなら本当に危ういのです▼令和さんが生まれた8世紀の昔も難しい時代だったと聞きます。政変が次々と起き、権力のありかも転々としました。そうした中でも唐や新羅といった周辺国とたくみに付き合い、大陸の文化を日本流にかみ砕いてイノベーションを進めたのですね。その伝統を受け継げるでしょうか。さあ、一緒に歩いていきましょう。(引用終わり)

 この国の宰相は、歴史的に大きな負い目がある、お隣の韓国や北朝鮮、中国との付き合いは二の次どころか絶交状態になってもお構いなしで、ご夫人と手をつなぎヨーロッパや米国を政府専用機で飛び回る。先の友人が嘆いたトランプ大統領との会談について、朝日二十七日夕刊が一面トップで、何とも的確な表現で報じた。見出しは「『抱きつき外交』のはずが」。佐藤武嗣・編集委員の「解説」は、次のような文言で始まる。

(工藤 稔)

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