「このところの何週か、面白くないな」――畏敬する先輩の、本欄に対するご感想である。私めの日々の歩数を読み取られている気がして、恐れ入る。心して仕事をせねばと、自戒する。

市内に住むご夫婦から、小熊秀雄賞市民実行委員会(松田忠男会長)に寄付をしたいとの申し出があった。その額、三十万円。賞を支えてくれる会員の増強に取り組んでいる実行委員会にとって、なんとも有難いお話である。先方は「あくまでも匿名で」とのこと。会のメンバー三人と一緒に、市内の某ホテルの喫茶室で、そのご夫婦とお会いした。

「一昨年、小熊賞がなくなってしまうと聞いて、ものすごく残念に思ったんです」と話すご夫妻は、ともに旭川医大出身、五十歳代のお医者さん。「市民の中から継続しようという声が上がって、それが形になったことが、本当にうれしくて。応援したくて、お金を用意したのですが、新聞の報道を読むと、うまく運営できているみたいだったので、用意したお金は、そのままにしてあったんです。先日、賞に関わっている知人から、『財政的には、なかなか大変なようだ』と聞かされて…」

今年五月十日、新たな運営母体による最初の、第四十一回小熊秀雄賞贈呈式が市民文化会館小ホールで行われた。小熊賞は、地元旭川ではまだまだ認知度は高くはないが、日本の現代詩の世界では、一つのステイタスとして評価が定着している、歴史ある賞である。

バブル経済に代表される、景気が上向きの時代、「まちおこし」の一つの材料として、全国各地で様々な文学賞が創設された。しかし、ほとんどの賞が行政主導で運営されていたことから、自治体の財政が厳しくなるにつれて、相次いで廃止や休止を余儀なくされた。一九六七年(昭和四十二年)、市民の手によって出発し、旭川市が応援する形で運営されて来た小熊賞は、意識を持つ市民と行政の良い連携が、四十一回もの賞を継続する力になって来た側面があるのだろう。

「賞継続のために役立ててください」と三十万円の寄付を手渡してくれたご夫妻の話を聞きながら、「このまちには、このように、おくゆかしく、知的で、素敵な方々がいらっしゃるんだな」と、改めて三十五万人の人口を持つ、我がまちの懐の深さを知らされたのだった。ほんわか、ちょっといい気分の枕は、ここまで。

読者からの電話。「あなた、去年の夏ころ、市の職員の出張旅費について書いていただろう。その後、どうなったのか、改善されたのか、されていないのか、何の報告もないけど、書きっぱなしは、ないんじゃないの?」。あらら、申しわけない。すぐ調べます…。というわけで、急ぎ、市役所人事課へ向かった。

昨年七月十日付の本欄「長ネギのある幸せと、ネコババ的出張旅費について」の大略は――

例えば、飛行機を使った東京への出張の場合、条例では「現に支払った運賃による」となっているにもかかわらず、往復割引の運賃が支払われている。また、東京の大学に進学している子どものアパートに転がり込もうと、インターネットカフェで一夜を明かそうと、一泊につき一万二千円が支給される。各旅行社が売り出している航空券とホテルがセットになったパックを使って二泊三日の出張をすれば、その差額四万円以上が、職員や市議会議員の臨時収入としてポケットに入る。

人事課の職員の話。「飛行機を使った場合、条例の十四条『現に支払った運賃による』はそのままですが、昨年十一月から、運用を変えました。今は、実際に支払った金額を支給しています」。つまり、条例の文言を正当に解釈し、ネコババが出来ないように改めた、というわけだ。

そして、「宿泊料については、今年二月の議会で条例を改正しました。以前は、市長などの特別職、議員は一級、普通の職員は二級と分かれて、宿泊料に差がありましたが、それを以前の二級の額に統一しました。道外への出張は一万二千円。道内は一万八百円。日当は、二千四百円です」と説明しながら、「交通費は、東京駅までしか出ません。そこからの電車賃は、日当の二千四百円から出すんです」と申しわけなさそうに言う。

何人かの企業経営者に社員の出張旅費について聞いた。その一人の話。「当たり前だろうけど、交通費も宿泊費も、領収書を提出してもらって、その額を清算する。東京でもどこでも、一万円以上のホテルになんか泊まる社員は、いない。役員だって同じ。五千八百円とか、それくらいの値段で泊まれるホテルが、いくらでもあるんだから。出張の日当は、昔はあったけど、二年前からやめた。出張してもしなくても、仕事はするんだし、飯も食べるんだから。出張したら赤字になる、なんてバカなことを言う社員はいないね。公務員には、コストに対する意識が必要ないからなぁ」。

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