雪の季節を前に、なんだか気が重い。市長選が、事前の予測を超える圧倒的な一人勝ちで終わってしまったのも、この気分に一役買っているのかも知れない。で、ほんわかする話を書きたくなった。大拍手ではないけれど、あぁいいなぁ、という気持ちになれそうなお噂を二題。

 十月、本紙主催の少年野球の大会があった。今季、様々な大会で優勝したチームが一堂に会し、チャンピオンを決める、その名も、「あさひかわ新聞杯争奪小堀千代蔵記念第十五回旭川少年野球チャンピオン大会」。主催者でも舌をかみそうになる、長大な大会名。協賛してくれているらーめんの山頭火のオヤジ、畠中仁さん(59)が、「十五回を記念して、優勝チームにラーメンをおごってやろう」と申し出てくれた。

 彼は道北の小さな町の出身。聞けば、少年時代、野球チームに入っていて、大会が終わった後、監督や引率の先生たちが自腹を切ってラーメンをご馳走してくれた思い出が忘れられないのだそうだ。「オレたちがラーメンをすすってる横で、三人で二本のビールを注文して、豆かなんかをつまみに飲んでるんだよなぁ」。

 大会から数日後、五年生以下のクラスで優勝したチームの選手たちが、ユニフォーム姿で店のカウンターに座った。キャプテンが「今日はお招きありがとうございます」と立派な挨拶をした。「照れるなぁ」と笑いながら、オヤジと奥さん、従業員が総出でラーメンを作ってふるまった。引率して来た二人のお母さんの立ち居振る舞いも上品だった。店内に「ヅルヅルーッ」と元気にラーメンをすする音が広がる。少年たちを眺めるオヤジの目が、いつになくやさしかった。大人になるって、いいことなんだなぁって思った――。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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