社の女性スタッフが取材先からいただいて来たスズムシが鳴いている。こんな小さな体のどんな仕組みで発するのか、不思議に心地よい、心が静まるような音を社内に響かせる。秋だ。

 東鷹栖の農家にお願いし、一反四畝の田んぼで米づくりを体験させてもらって三年目になる。春先の低温や雨つづきで心配したのだが、その後の天候の回復で、どうやら豊作になりそうだ。九月中旬過ぎの稲刈りに向けて、少し体を動かす準備をしておかなくちゃ。

 自宅の小さな菜園は、そろそろ終盤を迎えている。キュウリは、途中でうどん粉病にかかってしまい、すでに収穫を終えた。トマトは今が最盛期。ナス は花の付が悪くなり始めた。苗を植えるのが遅れたオクラが、四、五日前からやっと花を咲かせ、さて、食べられるほどの実になってくれるかどうか。

 世界中が注目している福島原発の事故の後も、北海道に住む私の周りでは、もちろん私も含めて、いつもの年と変わらない暮らしが続いているように見 える。春が来て雪が解け、夏から秋へ。そしてまた雪の季節がやって来る。大震災で被災した方たちや、原発事故で故郷を追われた人たちのことを思うと、申し 訳ないほど平穏な日常である。この安穏な日々は、果たして私たちの子どもや孫、ひ孫の時代まで続くのかどうか…。

(工藤 稔)

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