朝日新聞の連載「プロメテウスの罠」で「防護服の男」「研究者の辞表」「観測中止令」に続く第四シリーズ「無主物の責任」が始まった。二十三日付 で終わった「観測中止令」は、東日本大震災・フクシマの後の三月三十一日、世界最長を誇る気象庁気象研究所の放射能観測が、突然「予算を他に回す」という 理由で中止を余儀なくされたという「事件」のルポルタージュだった。気象研の二人の研究者は、他の研究機関からの援助で観測を続行する。記事に登場する文 部科学省、財務省、国土交通省の役人は全て実名。縦割りの組織の論理と保身、役人根性丸出しの言動がそのまま伝わる見事なルポだった。

 そして、二十四日からスタートした「無主物の責任」の第一回「だれのものでもない」の書き出しは――

 放射能はだれのものか。この夏、それが裁判所で争われた。

 8月、福島第一原発から約45キロ離れた二本松市の「サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部」が東京電力に、汚染の除去を求めて仮処分を東京地裁に申 し立てた。「事故のあと、ゴルフコースからは毎時2~3マイクロシーベルトの高い放射線量が検出されるようになり、営業に支障が出ている。責任者の東電が 除染をすべきである」。

 記事によると、東電は答弁書で「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって東電は除染に責任をもたない」と主張した。「放 射性物質はもともと無主物であったと考えるのが実態に即している」から、「放射性物質を所有しているとは考えていない。したがってゴルフ場で検出された放 射性物質は責任者がいない」と。

(工藤 稔)

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