参院選の争点の第一は、「経済」だそうだ。だから、福島第一原発で「高濃度の汚染水が地中に漏れ、海洋への拡散が起こっていることが強く疑われる」と原子力規制委員会が発表しても、ことの重大さに見合う報道はされない。
朝日新聞九日付夕刊の記事――
東京電力は9日、福島第一原発2号機の海側に掘った観測井戸で8日採取した地下水から過去最高の1㍑あたり2万7千 の放射性セシウムが検出されたと発表した。5日に採取した水に比べ、約90倍に急上昇した。東電は「海に漏れているかはわからない。今後データを集めて分析する」としている。
二日後、読売新聞十一日付朝刊の「『汚染水、海へ流出』疑い 規制委 対策部会設置へ」の記事の後ろに、付け足しのように見出しも取らず、次のような記事が載った――
東電が9日に「セシウム濃度が3日前の約90倍になった」と発表した1、2号機の海側の井戸水について、東電は10日、「分析し直したところ、濃度は上昇していなかった」と、事実上の訂正をした。本来は分析前に除去しなければならない汚染土が混じっていたとみている。他の井戸で検出されているセシウムなどの濃度については修正していない。
笑ってはいけない。ちょっとした間違い、手違いなのだ。世界に冠たる日本の原発関連技術にだって多少の誤りはある。小さなことじゃないか。何たって、我が安倍晋三総理大臣は、堂々と胸を張って世界に宣言している。「各国より、わが国の原子力技術への高い期待が示されている」「事故の経験と教訓を世界と共有し、世界の原発の安全に貢献することが、我が国の責務だ」と。
(工藤 稔)
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