とても暑い日が続いています。この猛暑の中で、長たらしい文章をお読みいただくのもいかがなものか、簡潔に、涼やかに、熱くならないような、そんな小欄があってもいいか、決して手を抜くためにではなく、ほら、亡き立川談志師匠が、夏に、小噺ばかりの高座なんてのをやってたじゃないですか。あのノリで一席、ではなくて…。

 七月三十一日付朝日新聞の政治面に載った「大臣筆の省庁看板 字は人を表す?」の見出しと写真を見て、こういう切り口があったのかと感心した。中央省庁の看板には、発足時の大臣が筆をとったものが多いところに目をつけた。記事にいわく、「いかめしい省庁の看板をじっと見つめると、政治家の性格や政権の特徴が透視できる、かもしれない」。

 記事に添えられた写真の光景に見覚えがあった。「内閣人事局」が発足した五月三十日、確かNHKニュースだったと思う。安倍首相と稲田朋美・内閣府特命担当相が、二人で看板を掛ける映像。看板に大書された、まるで下手くそな字を見て、「この女性大臣、なんて恥知らずな…」と感じたのだった。

 記事によると、ご本人は「字の上手下手は別として、勢いがあったかなと」と自己評価したそうな。似た歴史観、国家観を持つ“子飼い大臣”の作品を安倍首相は「みずみずしい筆遣い」と評したという。自分の職場の玄関に掲げられた、この看板について「独特の味わいがあっていい」という職員がいる一方、「毎日の通勤時にこれを見るのは正直しんどい。ちゃんとした書家に書き直してもらった方がいい」とこぼす職員もいるとのこと。気持ちは分かる。

 著書「近代書史」で大佛次郎賞を受賞している書家の石川九楊さん(69)は、「基本的で最も大切な均衡・均等、安定性を欠き、ここにあるのは見せかけの力強さや勢いだけだ。まさに、今の安倍政権全体を象徴している」とこき下ろしたと記事にある。芸術家の見上げた反骨。この方、勲章をもらう気などさらさらないな。

(工藤 稔)

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