旭川を代表する家具メーカー、㈱カンディハウスの創業者で、国際家具デザインフェア旭川(IFDA)を立ち上げた長原實さんが八日、肺がんのため亡くなった。八十歳だった。長原實という一人の男の存在なくして、現在の「家具のまち旭川」はなかった、と断言しても異論をはさむ人はいないはずだ。少年のようなピュアな魂を持ち続けた、偉大な椅子職人の死を悼む記事を、私なりの筆致で書こうと思う。

(編集長 工藤稔)

 長原さんは、一九三五年(昭和十年)三月一日、東川村(現東川町)の農家に七人兄弟姉妹の三男として生まれた。一九五〇年に中学を卒業、道立旭川公共職業補導所木工科で学び、市内の家具メーカー、熊坂工芸に就職した。「この会社を選んだ一番の理由は、毎週日曜日が休みだったから」。

 二十歳のころ、市立の木工芸指導所の松倉定雄所長と出会う。デザインという言葉さえ一般的ではなかった時代、「これからの職人はデザインをしろ」と教えられた。一人前の職人になっていた長原さんは一生懸命に働き、貯金をして、デザインの勉強をしようと上京した。「三十万円あったから、一年ぐらい暮らせると思って行ったんだけど、三カ月でなくなっちゃった」。

 東京でデザインの勉強をしているうちに、どうしてもヨーロッパに行きたいという気持ちを抑えられなくなった。しかし懐はスッテンテン。「旭川で五年くらい一生懸命に稼げば、ヨーロッパに行けるくらいのお金が貯まるだろう、そう考えて、上野からドン行で旭川に帰ってきましたよ」。

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(工藤 稔)

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