さすが公明党は弱い者の味方だ。強権安倍自民党に一歩も退かず、消費税への軽減税率導入を勝ち取った。十三日付読売一面トップのリード。

 ――自民党の谷垣、公明党の井上両幹事長は12日、2017年4月の消費税率10%への引き上げと同時に導入する軽減税率について、対象を「酒類と外食を除く食品全般」とすることで大筋合意し、文書を発表した。年1兆円規模となる財源は、16年度末までに安定的な恒久財源を確保し、財政健全化目標を堅持する。16年夏の参院選を控え、自民党が公明党の主張に大幅に譲歩した。(引用終わり)

 私は十一月十七日号の小欄で、朝日の株式ページのコラム「経済気象台」を引用して、軽減税率の論議の前に、消費税増税の是非そのものが議論されるべきだと書いた。私たちが納めた税の分配の仕方がそもそも間違っているのではないかと。

 安保法制の論議で、平和の党を掲げる公明党は当初は期待させる局面もあったのだが、結局は安倍・自民党に対して「踏まれても蹴られてもついていきます下駄の雪」だった。私の友人などは、「支持母体、創価学会の池田大作名誉会長の、兄弟の戦死とか空襲の経験とか、少年期の悲惨な戦争体験が平和の党・公明党の根っ子にあるとされる。だから戦争が出来る普通の国を目指す安倍一強政治の防波堤になってくれるのではとちょっと期待した。だが、一度連立政権の中に入って大臣ポストを一つもらって味をしめると、政権離脱なんてハナから論外なんだろうな。もしかしたら、公明票なしには選挙に勝てない自民に脅しをかけてでも安保法制を止めるかも、とはかない夢を見たオレがバカでした」と吐き捨てる。

 そんな巷の落胆の声が党中枢にも届いているのだろう。八%の消費税をゼロにするというならともかく、富裕層により恩恵が及ぶ、たかだか二%の軽減税率の導入に党勢をかけるがごとき執拗さで、財源なんかそっちのけで、自民党の大幅譲歩を引き出した公明党は、さすが平和の党、弱い者の味方だと感心してしまった、というオチで枕はここまで。

 七日付朝日一面、「南スーダンPKO『駆けつけ警護』先送り 政府、参院選後に」の記事を引用する。

 ――政府は、国連平和維持活動(PKO)に派遣する自衛隊への「駆けつけ警護」任務追加を、来夏の参院選以降に先送りする方針を固めた。複数の政府関係者が明らかにした。安全保障関連法成立を受け、当初は来春の部隊交代から武器使用基準を緩和し駆けつけ警護を可能にする方針だった。自衛隊活動に安保法が初適用される事例になると見込まれるため、世論に注目されて、参院選に影響するのを避ける狙いがある。(引用終わり)

 あのね、朝日は上品だから曖昧に書いてるけどね、つまり安倍政権は「参院選挙が終わるまで、死んだふりをしようぜ」と言っているわけだ。「寝たふり」と言い換えてもいい。

 

(工藤 稔)

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