七日の旭川市の新型コロナウイルス感染者は四人と発表された。まだ、第六波襲来の気配はないように映る。ところが――。

 七日付朝日新聞朝刊の一面トップは「沖縄・山口・広島 まん延防止」「9~31日 首相、措置強化の方針」の見出し。米軍基地の周辺地域で新型コロナウイルスの感染拡大が目立ち、「米軍由来」との見方が強まっている。政府は、特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」を沖縄、山口、広島の三県に適用する方針を決めた、という記事だ。

 「米軍由来」の表現を見て、沖縄は申し訳ないが、すぐに「さもありなん…」と理解するのだが、山口と広島は「どうして?」。しばらく考えて「山口は岩国の米軍基地か…」と分かる。そして、記事を読んで初めて、「広島県は、岩国市に隣接している…」と知らされるのだ。

 報道によれば、新型コロナウイルスの感染者は七日午後七時現在、全国で新たに六千二百十三人確認された。沖縄県で千四百十四人、広島県で四百二十九人確認され、いずれも一日あたりの感染者数は過去最多。山口県でも百八十人の感染が確認されたという。

 朝日の記事によると、沖縄県の玉城デニー知事は、「構造的な問題」として、日米地位協定の見直しを訴えているという。「構造的な問題」の意味については、以下、少し長いが記事を引用しよう。

 ――米軍人・軍属やその家族の出入国手続きなどを定めた協定九条は「外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される」と包括的に定めている。この「管理」に検疫も含まれる、というのが外務省地位協定室の説明だ。

 そのうえで日米政府はこれまでに、協定の運用について議論する日米合同委員会で、九条をめぐる二つの取り決めを結んでいる。

 ひとつは検疫のあり方についてだ。米軍人・軍属やその家族が(1)軍の飛行機や船で在日米軍基地に直接入国する場合は、米軍が検疫に責任をもつ(2)民間の飛行機や船で入国する場合は、日本側による検疫を受ける――との合意を1996年に交わした。(1)によって、基地での水際対策は米軍任せとなった。

 もうひとつの取り決めは、情報提供のあり方だ。二〇一三年、基地内や周辺地域で感染症患者が見つかった場合は、米側の医療機関と日本の保健所の間で、相互に「可能な限り早期に通報する」との覚書を交わした。

 しかし、情報提供に不満をもつ基地周辺の自治体は少なくない。

 神奈川県の黒岩祐治知事は六日、「必ずしも速やかな情報提供がなされないこともあると聞いている」「どこに問題があるかというと地位協定の問題にいかざるをえない」と話した。(中略)

 米軍岩国基地のある山口県岩国市に隣接した広島県。同市との関連が強く疑われる感染例がありながら基地側から情報提供は一切ないという。広島県の湯崎英彦知事は六日の会見で「非常に遺憾だ」と述べた。(中略)

 ――困るのは、民間住宅を借りて基地の外に住んでいる米軍人らが沖縄や山口では少なくないからだ。通常は外国人が三カ月以上国内に滞在するときは居住地などを登録する必要があり、住民基本台帳に載る。だが地位協定九条にもとづく特権で、米軍人らはこの対象からも外れている。街のどこに、どれくらいの人数の軍人軍属が住んでいるのか、自治体も把握できない。(後略・引用終わり)

(工藤 稔)

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