今月末に予定していた、新年会が延期になった。道知事が政府に「まん延防止等重点措置」の適用を要請し、二十五日にも全道が対象地域になると見られるためだ。その会合の幹事のような立場の私としては、忸怩(じくじ)たる思いがある。だが、お話をしてもらうようお願いしていた公務員の方から「この状況では…」と辞退の連絡があり、やむなく延期を決めた。

 なんだか、遠い昔の出来事のようで、記憶も定かでないのだが、昨年、二〇二一年五月から九月にかけて、「まん防」と「緊急事態措置」が繰り返された。営業は午後八時まで、アルコールの提供はダメ…。こうした措置に協力したお店には、一日あたり売上げに応じて大企業で最大二十万円、中小・個人事業者は二・五~七・五万円(酒類を提供しない認証店と非認証店は三~十万円)を支給される。

 ちまたでは「従業員を使って、店舗を借りてやってる店は大変だけど、父ちゃん母ちゃんが自前の店でやってるところは、ウハウハだな」「あの店のオヤジ、協力金でアウディの新車を買ったってよ」などと噂が流れたりした。そうこうするうちに、ワクチン接種が進んだせいか、はたまた季節要因でウイルスが静かになったのが原因か、いつの間にかコロナ騒ぎは治まった、かに見えた。

q2 十月、十一月、「オミクロン株」なんて言葉が聞こえてきて、やがて師走。その間、「第六波が必ず来るぞ」と警告が発せられていたし、欧米の爆発的な感染拡大も報じられた。それなのに、なぜか「日本は大丈夫」みたいな空気が醸成されて、年末年始は都市部を中心に人出がコロナ前の状況に戻ったように、田舎まち・旭川に暮らす私には映った。

 そして、やっぱり、再び、三度の「まん防」の発令である。ごく簡単に言えば、「飲食店の営業時間を短縮する」「アルコール類の提供は自粛する」ということだ。おいおい、これだけで本当に効果があるんかい? 行政にも、疫学にも、まるで素人の私でさえ、そう思う。はなはだ懐疑的。
 行政のプロの中にも、国の対策に疑問を持つ人がいる。報道によれば、愛媛県の中村時広知事は、十七日の記者会見で、飲食店への時短要請が中心の「まん防」に対して疑問を呈する発言をしたという。その要旨は以下。

 ――オミクロン株は飲食を抑えても感染防止につながらない。

 ――先に適用された沖縄県などでも感染は拡大しており、効果は非常に薄い。蔓延防止措置がオミクロン株に対して本当に有効なのか。

 ――費用対効果の問題を考えるのが大事だ。

 一方で、三・六街の飲食店ビルオーナーの一人は、「まん防でも、緊急事態でも、国から協力金が出るから、中途半端な状態よりも、営業時間を短縮したり、閉店したりした方がよほどいい。そうやって生き延びて、コロナ後に備える」と割り切る向きもある。

 さて、国の対策が「どうもトンチンカンだな…」と感じるのは、そもそもの感染経路の認識を誤ったからではないのか。私たちは、コロナは「飛沫感染だ」と知らされてきた。だから、飲食店ならテーブルの上にアクリル板を設置したり、スナックのカウンターにビニールをぶら下げたりした。だが、どうも世界の認識は「空気感染である」らしいのだ。もちろん、アクリル板や間仕切りのビニールに効果がないわけではない、唾などの飛沫は二、三㍍は飛ぶから。でも、空気感染に最も効果があるのは「換気」だ。

(工藤 稔)

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