「丸顔で、歳は五十歳くらいだった」「面長の感じ。歳は六十は超えていたと思う」――先月、中旬から下旬にかけて、三・六街の居酒屋やすし屋、小料理店で相次いで起きた「架空予約事件」の犯人像は、証言する人によってまちまちだ。

ある和食の店の板前さんの話。「四時頃だったかな、まぁ普通の服装、Gパンに半袖のポロシャツだったと思う。ニッツーのヨシダと名乗って、五月二十六日の午後六時半から、六人。飲み物は別で、料理が五千円という予約でした。翌日、同じくらいの時間に、人数が八人に増えたからって、わざわざ来たんですよね」。予約の日時に八人は現れず。「オヤジさんに、日にちを間違えたんじゃないかって言われたんだけど、二回も来て、確認してるんだから、何だかキツネにつままれたような気がして」。

予約の日を聞き間違えたのではなかったと判明したのは、その数日後、偶然だった。すし屋の店主がお客としてやって来て、カウンターでお酒を飲みながら「架空の予約を入れられて頭に来た」という話をした。「うちと同じ手口だ…」。急ぎ組合に加盟する店にファクスを流したり、電話を入れたりしたところ、すでに「やられた」店が数軒。「三千五百円の飲み放題で、六十二人」という大きな被害を受けた店もあったという。ほかの予約は断って、人数分の料理を用意し、準備万端整えて、待てど暮らせど六十二人の団体さんは現れず、だった。

「自転車に乗っていた」「JRの○○さんの紹介で」という名前をかたって信用させられたという証言もある。また連絡先の携帯電話の番号は、一様に栃木の女性のものだというが、その女性も「心当たりはなく、迷惑している」と困惑しているという。

どうやら、犯人は名店に狙いを付けて架空予約を入れて歩いたらしく、「食べ物の商売をしていて、失敗したヤツじゃないか」と推測する者もいるが定かではない。その後、三・六街の店主の間に情報が伝わったため、末広や東光地区に進出して同じような犯行を企てたらしいが、ここ一週間ほどはおさまっているという。

長引く不況に加え、新型インフルエンザの来襲、そして例年になく涼しい初夏、三・六街に限らず飲食店業界は、なかなか厳しい時期だ。その傷口に塩を塗るような、悪質なイタズラ予約。ある店主は、「どんな理由でこんなことをするのか分からないが、見つけたら皆で袋叩きにしてやりたい気分だ」。名店に宴会や飲み会の予約を入れる際、もしかすると根掘り葉掘り素性を確認されることもあるかも知れないが、その辺の事情を察していただき、どうかご立腹なきように。枕はここまで。

政治の世界がどれほど仁義なきところであったとしても、それをやっちゃおしめえよ。腹が立って、テレビに向かって持っていた飲みかけのビールのグラスを投げつけたくなった。もったいないから思いとどまったけれど。

日本郵政の社長人事で、かなり株をあげたらしい自民党の鳩山邦夫・前総務大臣が、離任の会見で、今年春に麻生首相からもらった手紙の内容を暴露したという報道。すったもんだの挙句、鳩山氏を更迭した首相が当初、渦中の西川社長を交代させる意向だったことを裏付けるための裏話である。読売新聞六月十六日付朝刊によれば、鳩山氏はご丁寧にその手紙の文面まで紹介している。「西川後継人事でお悩みではないかと思います。ついては自分なりに後継にふさわしい(と考えている)人が何人かいるので、リストを同封します」。

その証言を記者に付き付けられた麻生首相は、「コメントはありません」。努めて笑顔を保とうとするその表情は、正直、可哀想でございました。その胸のうちを代弁させていただくと「おいおい、世は盟友と呼ぶ太郎会の会長さんよ。それは、お互い、墓場まで持っていく話じゃなかったの」だったろう。

この方、そう言えば、ちょっと前にこの欄で取り上げさせていただいた。深夜の公園で裸になったクサナギ君を「最低の人間」とこき下ろし、翌日、世論の猛反発を浴びて「最低の行為」と言い改めた、あの御仁。墓場まで持って行くべき話を暴露した後、自分のことを「正義と友愛の人」だと臆面もなくのたまう姿に、へどを吐きたい気分にさせられたぜ。大マスコミは、この仁義無き、正義と友愛の人が自民党を割って出て新党を結成したり、兄が党首を務める民主党と連携する可能性があるやに伝える。万々が一、一寸先は闇の政界の常でそんな展開になったとしても、この信義や仁義よりもテメエの人気取りを優先する程度の政治家が、人や社会を動かせるとは到底思えませんけど――。

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