なにやら、日本中で、どんどん幼稚化が進行している気がしてならない。いい歳をしたオヤジやオバサンが、携帯電話に年端もいかない幼児が喜びそうなキャラクターのストラップをジャラジャラ付けて喜んでいたりさ。印籠や巾着に付ける、職人の技が光る「根付」とは、全くデザインのレベルが違うんだよなぁ、言っちゃあ悪いけど。この国の教育の底が知れるわ。

十二日付けの各紙に、笑顔の高橋はるみ知事が来年一~二月に釧路と札幌で開かれる冬季国体の「マスコットキャラクターができました」とPRする記事が載った。北海道だけに生息するクロテンの兄妹「くろ助」と「テン子」。中途半端なデフォルメ、耳にリボンが付いている方がテン子だと。公募などによる制作者の名前はなかったから、多分広告代理店あたりが安上がりにでっち上げたシロモノだろう。

タオルやそれこそストラップ、縫いぐるみ、お菓子…、会場などで販売する商品に使うためにマスコットキャラクターを作る、使い古された手だが、まぁ、それはありかも知れない。だが、もう少し、なんとかならないものかね。いい歳こいたオヤジやオバサンが手を伸ばしても恥ずかしくないような、そのぉ、センス、美的感覚、粋とでも言うのかね。これじゃあ、使われるクロテンが哀れになるべさ…。枕はこまで。

ある障害者施設の責任者の話である――

入所している六十二歳の女性が、婦人科の出血が続く症状があり、近くのクリニックで検診を受けた。医師は「子宮頸がん」と診断し、自分のところでは手術はできないからと市立旭川病院に紹介状を書いた。女性は軽い認知症。息子が一人いるが、所在不明で連絡を取ることは不可能という状況。

女性を診た市立病院の医師は、「手術には家族の同意が必要だ」と言う。付き添って行った看護士が困って「園長、副園長、生活相談員と相談したい」と申し出た。すると医師は「それは家族ではないでしょう」と、あくまでも家族の同意が欠かせないと主張し、患者に対して「様子を見るのも一つの方法ですよ。分かりますね」と同意を求めた。女性は「ウン、ウン」とうなずいたという。

市立病院で入院を拒絶されたが、かといって施設に帰れる状態ではないことから、女性はガンと診断したクリニックに戻り、再入院した。その後、クリニックの医師、施設の責任者、市立病院の担当医との間でやり取りがあり、付き添って行った看護士に「あなたは(経過をみるということを)了解して帰ったじゃないか」と市立病院の担当医からわざわざ電話があった。

クリニックの医師は、旭川医大病院と連絡を取り、女性を送った。医大病院の医師は付き添った看護士に「施設の責任者と話をして進めたい」と伝え、その後、責任者が同意書にサインし、診断・手術が行われた。結果は、子宮に頸がんと体がんが見つかり除去。手術は成功し、女性は回復、間もなく退院して施設に戻れるという。

市立旭川病院に取材した。事務局長の話――

担当した医師からの報告では、付き添って来た看護士に、「初診の段階では出血もない。社会的、基礎疾患、家庭環境から上皮内がんであれば、五~十年の進行であるため、保存的治療も選択肢であること。取り合えず、クリニックでの対応を勧める旨の説明を行った」と説明したとのこと。当院では救急の患者を受け入れていることから、本人や家族の同意がなければ検査も手術も絶対にしない、ということではない。セカンドオピニオンということで、本人や家族が同意できなければ他の医療機関を受診してもらうという例も珍しくはない。つまりケースバイケースで、症状や医師の判断、つまり家庭環境や病状の緊急度などで検査や手術をしない場合もある。

再び、障害者施設の責任者の話――

家族や縁者がいない人は、病気になったら手術も受けられないというのか。ルールとして本人や家族の同意が必要、という原則論は分かる。今回、「施設の責任者として、私が全ての責任を持つ」と言い伝えた。それにもかかわらず、拒絶された。市民のための市立病院が、社会的弱者がそうした状況になったとき、建前通りに「家族の同意が不可欠」として検査も手術も拒否するのか。私どもの施設でも、こうした事態は今後も起こり得る。そうしたとき、市立病院はどう対応するのか。現場の医師の判断に任せるのか、それとも病院全体として一定の合意システムをつくるのか。私を含めて当施設のスタッフは、明確にしてもらうことを望んでいる――。

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