組織のトップ、例えば企業であれば社長が、自らの会社経営に対する理念や今後の商売の方向性、従業員の人事など、重要な問題について共通した認識や意思を持つであろう二番手、専務や常務の後任を決めなければならない場面で、自分が名を挙げて示した人物を、ほかの役員や幹部社員が「社長、あの方はダメですよ」と拒否したとする。素直に「あぁ、そうですか、じゃあ私の案は取り下げます」と引き下がる社長を、私、寡聞にして存じ上げない。

 退任が確実視されていた高瀬善朗副市長(63)の続投が十日の市議会で承認された。先の市長選で、八万二千票余りを獲得して二選を果たした西川将人市長が高瀬副市長の後任として示した某部長(60)の人事案に議会が同意しなかったためだ。

 八人という少数与党の民主党の中でさえ、意見が割れる状況だったという。反対する理由は、「環境や農政畑が長く、財政や人事など総合的に市役所全体を見る部署の経験がない」「特別職の中に、市職員労組の委員長経験者が、小池語朗教育長と二人になるのは問題だ」などだったとされる。だが、こうした理由が市長の人事案を潰す決定的な要因だとは思えない。むしろ、潰すために考えられた“後付け”の言い訳に映る。

 市の元幹部の話である。「今は副市長と呼ぶらしいが、助役の人事は、市長自らが動いた。専決事項だから。議会の反対が相当強いことが分かっていても、水面下で自らの政治手腕を発揮して押し通す。具体的な名前まで挙げて自分が示した人事を引っ込めるなんて無様は、見たことがない」

(工藤 稔)

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