休日の夜、家人と二人、ボケーッとテレビを見ていて、珍しくチャンネルをあちこちやっていたら、「藻から石油」「日本が産油国に」――刺激的な番組にぶち当たった。その概略は、筑波大学の渡邉信教授が沖縄の海で発見した「オーランチオキトリウム」という名の藻が、油を大量に生成するのだそうな。この藻を日本国内の休耕田や耕作放棄地で養殖・栽培すれば、いま日本で消費されている石油の全量を賄うことができる。つまり、日本は世界有数の産油国になれる、という。

 その藻の生産効率は、バイオエネルギーとして注目を集めているトウモロコシの五万倍。大量生産システムが確立できれば、一㍑当り五十円のコストで生成可能だとも。日本が輸入している原油価格と、それほど差がない。番組の最後では、渡邉教授が糟糠の妻が見守る前で、その藻から抽出した油を燃料にしたトラクターを運転してみせた。

 この夢の藻から作る油は、十年後の実用化を目指しているという。実現すれば、石油を自前で賄える上に、二酸化炭素の排出も大幅に削減できて、さらに休耕田や耕作放棄地も活用できる。もちろん、放射能汚染などとは無縁。まさしく夢の新エネルギーではないの。

 米国などは石油に代わる新エネルギーの研究開発に数百億円の巨費を投じ、やっきになっているとされる。事実、番組の中でも、渡邉教授の元には世界各国から「共同開発を」とオファーが殺到していると伝えていた。原子力発電一辺倒で、札びらの力で無理やり原発を推進してきた日本だが、フクシマの教訓に学び、こうした新たな分野に研究開発費をドーンと出したらどうか。十年後の実用化などとのんびり構えていたら、どこかの国に横取りされちゃうぜー。それにしても「外国になど絶対に売りません」と毅然として言い放った渡邉教授、立派な科学者・研究者というのは、ちゃんといらっしゃるんだなぁと、三月十一日以来、権力と札束に擦り寄る御用学者ばかり見ていた当方としては、なんだか少しホッとした。枕は、ここまで。

(工藤 稔)

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