屋外で飲む季節も終わりだということで、社員たちとビアガーデンに出かけた。メニューを見た一人が「白菜の漬物があるぞ」と言う。「浅漬けではなく、麹漬けだけど」と。このタイミングで、開放的な雰囲気の飲み食いの場で、白菜の漬物を堂々とメニューに並べるとは気持ちが良いではないの。当然自家製で、よほど衛生管理に自信を持っているか、それとも何にも考えていないかどちらかだろう。だが、いずれにしても風評被害に痛めつけられている生産者や漬物業界にとって、悪いことではない。当然、注文した。自分で育てた野菜を使った漬物には及ばないが、うまかった。
白菜の浅漬けによる腸管出血性大腸菌(O157)の集団食中毒について、報道を読んだり聞いたりしていて、どうも今ひとつ腑に落ちない気分でいる。死者七人、発症者百三十五人という大惨事に発展する当初の一部の報道では、「白菜に畑で付着した牛糞の堆肥が原因ではないか」とされた。農家の友人は、言う。「堆肥は発熱するから、O157の菌は死滅する。万が一、生の状態のものを畑に入れたとしても、土の中にO157を殺すバクテリアがたくさんいる。だから、白菜が原因とは考えられないんだけどなぁ」と。
この事件の報道で知ったこと。売られている漬物の多くは、次亜塩素酸ナトリウムと呼ばれる塩素系の消毒液に十分間浸けられるのだそうだ。その濃度は百五十ppm。ちなみに水泳プールの塩素濃度は〇・四~一ppm、水道水は〇・一~二ppm程度だそうだから、漬物の野菜はその後に水洗いするとはいえ、低くない数値に思える。まぁ、その塩素が食べる者にどんな影響を及ぼすのか、及ぼさないのか、それは正直、誰も解らぬ。とにかく、その濃度の数値は、この事件を教訓に大きくなることはあっても、しばらくは小さくなることはないだろう。
腹立たしく思ったこと。報道によると、我が北海道の大統領高橋はるみ知事が、今回の事件を受けて、「『食の安全・安心』といつも言っている北海道の立場として、大変残念で申し訳ない」と述べたと報じられた。ホテルに泊まった道外の観光客にも被害が及んだのだから、まぁ当たり前のコメントだろうが、続けて、「国に対して、全国統一の浅漬けの製造基準を定めるように求める考えを示した」のだそうだ。03
(工藤 稔)
(全文は本紙または電子版でご覧ください。)
●電子版の購読は新聞オンライン.COMへ