受信料を払っている者の一人として申し上げる。このところのNHKの報道についてである。その一、午後九時からの「ニュース9」のアナウンサーが読み上げる原稿がひど過ぎる。体言止め、省略、の連続で、聞くに堪えない状況になっている。例えば、「…日中間の火種になっている尖閣列島。」「…と野田総理大臣。」「街の声は。」。私は、先輩記者から「一つの記事の中で、体言止めの表現は、せいぜい一つ。出来れば、使わない方がいいだろう」と習った。目で読む紙の原稿にして「せいぜい一つ」である。いわんや耳に伝える話し言葉をや、ではないのか。理屈より何より、耳障りなことはなはだしく、窓ガラスを釘で引っかく音を聞かされるごとく、神経に障って仕方がない。

 その二。ニュースの優先順位が、お話にならないくらい間違っている。どうも、NHKのニュースを見る者が、民放のワイドショーの視聴者と重なっていると考えているようなのだ。例えば、今月四日の午後七時からの「ニュース7」のトップニュースは、「プロ野球選手会がWBCへの不参加決議を撤回して出場を決めた」だった。選手会会長の記者会見、王貞治元監督や原辰徳巨人軍監督のインタビュー、果ては街頭の市民にマイクを向けて、三人に「よかったです」「日本を元気にしてくれるゲームを」などの話をさせているではないか。こんなスポーツのショーの宣伝に五分以上も費やして、民主党が発表した「原発ゼロ社会を目指す」目標についてのニュースや東日本大震災で発生した大量のがれきに含まれるアスベスト被害の報道は二の次、三の次かい。

 気弱で従順な民草の一人だから、とても「受信料なんか払わない」「金返せ」なんて口には出せないけれど、「学校で習った言葉を話してください」「視聴者をバカにしないでほしい」と強く思う。枕はここまで。

 五日の日経電子版に、「米電力大手、原発新設計画を撤回 ガス価格下落で」の見出しの記事が載った。少々長いが、引用する――

(工藤 稔)

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