末席に名を連ねさせている団体の研修会で釧路に行ってきた。釣行の行き帰りに通過することは何回かあったが、宿泊して街を歩くのは初めてだった。市街地をそぞろ歩いていて、「建物の風情がどことなく面白いなぁ」と直感的に思った。同行した釧路出身の経営者にその感覚を話すと、「モヅナさんの影響のせいでしょうかね」と言った。まるで、モヅナさんという方と知己のような、高知県人が坂本龍馬のことを口にするのに似た、不思議な親しさが込められた口調だった。

 旭川に帰って来てから調べてみると、毛綱毅曠(もづなぎこう)氏は一九四一年(昭和十六年)、釧路市出身の建築家。その世界では海外にも名前を知られた著名な方だそうな。二〇〇一年に他界されている。釧路市にも氏が設計した建物があちこちにあるという。釧路入りした夜、ものすごく美味なカキやホッケの干物を炉辺焼きでいただいたフィッシャーマンズワーフの建物も氏の設計によると後で知った。たった一人の建築家の“匂い”が、まち全体に波及する、そんなことって本当にあるのだなぁと、妙に感動させられた釧路行であった。枕はここまで。

 民主党への政権交代後、本体工事が凍結されているサンルダム建設計画について、国土交通省北海道開発局が二十一日に札幌で開いた事業審議委員会(委員長・萩原亨北大大学院教授)は、「建設事業の継続が妥当」とする開発局の方針を了承した。開発局お得意の、自らに都合がいい、恣意的な委員構成による会合で、アリバイのための多少の反対はあるが、結論は最初から決まっている出来レースの委員会。工事の凍結解除に向けた手続きは完了し、あとは本省で形だけの検証が行われるのだそうだ。

 「近いうちに」総選挙が行われ、政権がどうなるのか不透明な状況という背景もあるのか、開発局のお役人たちは大急ぎの態で本体工事への予算措置に突き進んでいる。七月三十一日に五回目の「関係地方公共団体からなる検討の場」を開催、八月二十三日には、「学識経験を有する者の意見を聴く場」と「関係住民の意見を聴く場」を相次いで終わらせた。この手の会合が一日に二つ、しかも同じ会場で開かれるのは極めて異例だ。

(工藤 稔)

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