一九六四年(昭和三十九年)、東京オリンピックがあった年、私は中学一年生だった。翌年、姉が入学した高校に「オリンピックの国内予選の決勝で、飯島と一緒に走った先生がいる」と聞いて、高校のグラウンドで陸上部を指導しているその方を見に行った記憶がある。飯島秀雄、後にプロ野球のロッテオリオンズに代走専門で入団した短距離選手、思い出してもらえるだろうか。

 半世紀前の東京オリンピックで記憶に残っているのは、柔道のヘーシンク、マラソンのアベベと円谷、世紀の駄作とこき下ろされた市川昆監督の記録映画を学校の体育館でみたこと…いやいや、そんな懐古趣味にふけるために書き出したのでない。二〇二〇年の夏季五輪の招致を目指して二十三日、東京都庁に、安倍晋三首相や経団連の米倉弘昌会長、猪瀬直樹都知事ら八百人が集まって大げさな出陣式を開いたというニュースを見たり、読んだりして、この方たち本気なのかねと首を傾げてしまったという話である。

 二十一日付の日本経済新聞は、「高濃度汚染水300㌧漏れ」「急造タンク、対応後手」「福島第一 国際社会も懸念」の見出しで、東京電力福島第一原発の地上タンクから新たに三百㌧もの高濃度汚染水が漏れている状況について、「東電によると、敷地内に1059基ある汚染水タンクのうち、約350基が漏れが分かったタンクと同じ急造型だ」「タンク内の汚染水は約30万㌧。原子炉の建屋地下の汚染水は地下水の流入で1日400㌧増えており、タンクを増設しては処理して移すという綱渡りが続く」「政府は今月初め、1日300㌧の地下水が放射性物質で汚染され、海に流出しているとの推計をまとめた。急場をしのぐにはタンクを造り続けるしかないが、敷地にも限りがある。汚染水をため続ける以上、今後も漏洩などのトラブルは避けられそうにない」などと報じた。そして、原発推進を主張する日経が、次のように書く。

 「国際社会の懸念も広がりつつある。韓国政府は19日、汚染水の海洋流出を巡り資料の提供を求めたことを明らかにした。国際原子力機関(IAEA)は汚染水対策も含めた原発の事故処理に関心を深めている。20日には欧米の主要メディアが相次いで速報し、東電の説明などを詳しく伝えた」

 十三日号の小欄で、私は次のように書いた。「同盟国アメリカでさえ、福島、茨城、栃木、群馬、千葉、神奈川、宮城、岩手産の、日本が出荷制限をおこなっている品目は『輸入停止』。福島、茨城、栃木の乳製品、果物・野菜とその加工品には『放射性物質検査証明書の添付を要求する』。外務省経済局がインターネットに公表している資料によると、七月一日現在、世界十二カ国、EU加盟二十八カ国を勘定に入れれば四十の国が日本からの輸入に対して、何らかの規制措置を講じている。説明するまでもなく、放射能汚染を恐れて、である」

(工藤 稔)

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