少し前のことだが、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が日本を訪れ、安倍晋三首相と会談したり、天皇皇后両陛下と会見したと報じられた。安倍・メルケル両首相の共同記者会見を伝える朝日と毎日の記事に添えられた安倍首相の写真が、何とも「つまらなそうな顔」だったのが印象に残ったくらいで、私はさほど関心がなかった。

 ところが、ひょんなことからメルケル首相は大きな目的を持って日本にやって来たということに気が付いた。考えてみれば、三月九日の早朝に特別機で羽田に着き、翌十日昼過ぎには日本を離れるという超過密スケジュールでの来日である。今年六月にドイツで開催されるG7の議長国として、来年の議長国である日本の総理に仁義を切るぐらいの用件ならば、なにもこの時機に、こんなに大急ぎの旅でなくても良かったはずではないか。

 なぜ、このタイミングだったのか。今年は先の戦争から七十年の節目の年だ。日・独・伊などの枢軸国と戦って勝利した連合国では、それぞれ大規模な式典が行われるに違いない。一方の敗戦国の日本は、安倍首相が発表すると約束している「談話」の内容を巡って様々な観測や御注進やさや当てがかまびすしい。安倍首相はまた、四月に渡米する際に、米議会で「演説」を行う予定があるという。メルケル首相は、安倍首相が「談話」と「演説」の草稿を固める前に、訪日しなければならなかったのではないか。それは同じ敗戦国・ドイツの首相として、日・中・韓で続く不安定で不穏な情勢を案じる欧米諸国の意を受けて、いわば「派遣」される形での訪日ではなかったか。

 そんなこんなを調べるうちに、梶村太一郎という方のブログに行きあたった。今の今まで名前を存じ上げなかった不明を恥じる。「週刊金曜日」などに執筆している、ドイツ在住のフリージャーナリスト。一九四六年(昭和二十一年)、岡山県津山市の生まれだというから、私とほぼ同年代だ。

(工藤 稔)

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