中国の領海警備などの任務を担う中国公船が沖縄県・尖閣諸島周辺の日本領海に侵入を繰り返していると報じられている。中国が主張する南シナ海の権利について、七月、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が否定する判断を下したことで、国内からの批判をかわすために東シナ海でも実効支配を進めているとアピールする必要があったとの指摘がある(十日付朝日)とか、中国指導部の中で権力闘争が起きていて、国民の目を外に向けるための動きだろう、との観測がまことしやかに流布される。リオ五輪メダル量産の熱狂の中で、日本国民にとって尖閣の問題など、「あら、そうなのね」くらいのニュースバリューなのだが。

 私は、日本政府の抗議を無視して繰り返される中国公船の領海侵犯は、安倍晋三首相が新内閣の防衛大臣に稲田朋美を指名したことに対する中国の反応の一つだと考える。稲田は、安倍首相と同じの極右の政治家だ。日本の核武装について「日本独自の核保有を、単なる議論や精神論ではなく国家戦略として検討すべき」と公言し、「靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけないんです」と主張する。南京事件についても疑義を挟む稲田防衛大臣が、中国の挑発にどんな対応をするか、彼の国は試している。大マスコミは一切触れない、稲田防衛大臣誕生という安倍首相の個人的な冒険心が、この後、どんな結果を招くか。興味深く眺めている。枕はここまで。

 嫁に行った娘が、亭主の留学に付き合って、この春からフィンランドで暮らしている。フィンランドについての知識は皆無に等しい。調べてみると、面積は三十三万八千四百平方㌔㍍。日本よりも少し小さい国土に、北海道の人口より十五万人ほど少ない五百三十二万人が暮らす。西はスウェーデン、北はノルウェー、東はロシアと隣接し、南はフィンランド湾を挟んでエストニアだ。首都はヘルシンキ。

 人口密度が北海道の四分の一という森と湖ばかりの国の、そのまたド田舎にいるという娘は、日本を離れて四カ月が過ぎて里心がついたのか、結構ひんぱんにメールをくれる。そこに、「この国の子どもは幸せに見える」とあった。「フィンランドの子どもが幸せだと思える理由を教えて」と返信すると、以下のようなメールが届いた。あくまでも、「私が思う幸せに当てはめて、フィンランドの子どもはどう見えるか、という話です」と前置きが付いた長い手紙の一部を紹介してみよう。

 ――こちらに着いてすぐ、日中どこへ行っても子ども連れの家族に会うので驚いた。母親だけと見られる場合も、両親揃ってと見られる場合もあり。

 週末でもないのに、のんびりベビーカーを押して、暖かい日には公園でピクニック、二人、三人と小さな子どもを連れて、ずいぶん余裕があるんだなと感じました。

 フィンランドでは、産休や育休制度が充実しているとは聞いていたけれど、実際に制度を使える職場環境が整っているのかなと思います。

 日本で子ども連れを見ると、「大変そうだなあ」と感じることが多かった。

 

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。