弊紙は、毎年五月、読者に協力を呼び掛けて盲導犬育成のためのキャンペーン企画を掲載している。会社二階の押し入れにしまい込んである、協会から頂いた感謝状の日付を見ると、二〇〇〇年(平成十二年)が最初らしい。北海道盲導犬協会に届けた皆さんからの浄財が平均十五万円として、まだ盲導犬一頭を飼育する費用五百万円の半分ほどだ。

 十五日、東京メトロ銀座線青山一丁目駅で盲導犬を連れた男性(55)がホームから転落し、入って来た電車にはねられて死亡したと報じられた。男性は、江別市の幼稚園の元園長で、今年三月に東京に転居していた。

 事故の直前、男性は盲導犬を連れて改札を抜け、ホームを斜めに歩き、点字ブロックを越えても、そのまま線路に近づくように歩いていたという。気付いた駅員が「下がってください」とアナウンスした直後に、足を踏み外して転落した。

 二十日付北海道新聞によると、一緒にいた盲導犬は、北海道盲導犬協会が二〇一四年五月から男性に貸与し、東京に転居した際は、指導員が付き添って自宅周辺や通勤路の危険箇所をチェックするなどの支援をしたという。

 ニュースを聞いた瞬間、事故に遭った男性を悼む気持ちと同時に私の脳裏に浮かんだのは、ホームにぽつんと残された盲導犬の姿だった。この駅は東京に引っ越した男性の、新しい職場の最寄り駅だったという。盲導犬は毎日、男性の眼となって通勤していただろうに。一体、何があったのだろう。いま、どんな気持ちでいるのだろう。

 この事故を機に、地下鉄駅へのホームドア設置が進むことを願う。そして決めた。「盲導犬が一緒だから」「白い杖を持っているから」とおもんばかって、声を掛けたり、手を差し伸べたりするのを遠慮するのはやめよう。「結構です」と言われたら、それはそれでいい。

 解体の危機にある旭川市の総合庁舎を見学する会が十九日午後、行われた。一九五八年(昭和三十三年)に建設された現庁舎を免震・改修して、活用しようと活動する「赤レンガ市庁舎を活かしたシビックセンターを考える会」(代表・大矢二郎東海大学名誉教授)が呼び掛け、市議会議員や道議会議員を含め四十人が集まった。

 人数が多かったため、正面玄関の近くで、外壁の赤レンガの積み方の説明を聞いたり、二階から議会棟に抜けて、本会議場で、大矢代表が建設当時の解説をしたりした。

 大矢先生の話の中で、「あらら」と感じたのは、小欄で幾度も書いているDОCОМОМО(ドコモモ)の「日本におけるモダン・ムーブメントの建築一〇〇選」に関することだった。詳細は省くが、近代建築の記録と保存を目的とする国際的な学術組織ドコモモは、二〇〇三年に旭川市庁舎を含めて、百の近代建築を選定、発表した。少し前に、世界遺産登録が決まった国立西洋美術館(東京・上野)も選ばれている。その「選定建築物」を示すプレートが、市民の目に触れることなく、市役所のどこかに眠っているというのである。

(工藤 稔)

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