支持政党は断固として自民党、という八十一歳の元企業経営者と久しぶりにお会いした。大病を患っていささか弱っている様子だったが、開口一番、「道北は危ないな」と言う。先輩いわく。

 ――昨日の道新に、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の記事が大きく出ていたじゃないか。核のゴミを捨てるのに適した地域を色分けした地図を公表するという話だ。名寄から稚内までのJRは、おそらく廃線になる方向だろう。JR北海道が「維持できません」ってバンザイしちゃってるんだから。線路の維持管理を自治体が担う「上下分離方式」って話も出てるけど、人口減少が進む沿線自治体に、そんな財政的な余力があるとは到底思えない。きっちり符合するんだよ。JRがなくなった地域は急速に衰退する。住民が減る。明治以前の原野に戻る。東京から遠い、北海道の北の果て。核のごみ捨て場を造るのにもってこいじゃないか。
十五日付北海道新聞は一面で「核ごみ処分適地 今夏にも」「政府 日本地図に色分け」の見出しで、「処分地に最もふさわしい地域の中には、道内の沿岸部なども含まれる見通しだ」と報じた。

 三面にも関連記事が図入りで大きく載った。「火山から十五㌔以内」「活断層が多い」「軟弱な地盤」など七項目の科学的要件全てに該当せず、加えて輸送面で優位な海岸から約二十㌔以内の沿岸部をマップ上に色分けして示し、住民との対話を重点的に行う。その後、処分地選定に向けた調査を受け入れた自治体に、電源立地地域対策交付金として初年度だけで十億円交付するという。記事は、「『迷惑施設』の誘致をアメで後押しする旧態依然の政策は相変わらずだ」と書く。

 同じ三面には「ニュース虫めがね」のQ&Aもあって、現在、旭川から二百㌔ほど北の宗谷管内幌延町で日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターが行っている地層処分の研究について分かりやすく解説している。
この研究センターでは、原発で使い終えた核燃料から再利用できるウランやプルトニウムを取り出す再処理の行程で出る廃液、つまり「核のごみ」と呼ばれる高レベル放射性廃棄物を地下三百㍍以上の地層に埋めて処分する方法を研究している。

 小欄でも二年前、農業者のグループに同行してセンターを訪れた折の体験記を書いた。この一帯は元々は海の底で、地下三百㍍は塩水ジャブジャブ。そこに、人が近づけば三十秒で死んでしまうほどの高レベル核廃棄物をガラスと混ぜた固化体にして、金属容器に詰め、周りを粘土でくるんで三十年から五十年間保管して冷ました上で、埋めちゃうという計画。それが地層処分だ。

(工藤 稔)

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