私の話を聞いていた家人が、無表情で答えた。「言いたいことは読売新聞に書いてあるから読んでくれ、って国会で答弁する総理大臣だもの、何があっても驚かないわ。品がないって総理に叱られるかも知れないけど、いわゆるズブズブなんじゃないの?」。

二十二日(月)の読売新聞朝刊、社会面にでかでかと載った三段見出しの記事には驚いた。「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」。以下記事のさわり。

――文部科学省による再就職あっせん問題で引責辞任した同省の前川喜平・前次官(62)が在職中、売春や援助交際の交渉の場になっている東京都新宿区歌舞伎町の出会い系バーに、頻繁に出入りしていたことが関係者への取材でわかった。教育行政のトップとして不適切な行動に対し、批判が上がりそうだ。

関係者によると、同店では男性客が数千円の料金を払って入店。気に入った女性がいれば、店員を通じて声をかけ、同席する。

女性らは、「割り切り」と称して、売春や援助交際を男性客に持ちかけることが多い。報酬が折り合えば店を出て、ホテルやレンタルームに向かうこともある。(後略・引用終わり) 記事には、前川前次官が約二年前からこの店に通っていたとか、同席した女性と連れ立って店を出たこともあるとか、店に出入りする女性の「私も誘われたことがある」という証言まである。

そして、こうした店が「売春の温床とも指摘されるが、女性と店の間の雇用関係が不明確なため、摘発は難しいとされる。売春の客になる行為は売春防止法で禁じられているが、罰則はない」とご丁寧な解説までする。事件が起きたわけでも、前次官が被疑者なわけでもない。日本一の発行部数を誇るという読売新聞は、安倍政権を擁護するためなら、ついに芸能週刊誌的話題を新聞記事の体裁で報じるようになった。

三日後、二十五日の新聞各紙は、一斉に「文科前次官『文書は本物』 加計学園巡り週刊誌報道」などの見出しで、前川前次官について、出会い系バー通いとは関わりのないニュースを載せた。スポーツ紙も含め、私が目を通した全ての新聞がほぼ同様に報じた。唯一、読売新聞を除いて。分かりやすい日経の記事を引用する。

(工藤 稔)

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