焼鳥屋のカウンターで、六十歳をとうに過ぎたオジサンとオバサンの一団が、「あの少年棋士・藤井聡太くんは、高校に進学すべきか否か」という話で盛り上がっている。オジサンの一人は、「高校くらい出ておいた方がいいべ」と言う。オバサンは「勉強なんていつでもできる。大検を取れば大学にも行ける。今は将棋を究めるべきよ」と主張する。藤井四段は十五歳になったばかり。

 横で聞いていて、少し前(七月十二日付)に朝日新聞の「声」欄に載った、十四歳の中学生の鋭い指摘を思い出していた。少し長いが、「中学生 菅谷泰良(東京都 14)」の投書を紹介しよう。

 ――東京都議選は「都民ファーストの会」の圧勝だった。代表は東京都知事の小池百合子さん。

 しかし翌日、小池さんが代表を辞任したニュースを僕は見た。選挙後すぐだったので、とても驚いた。代表が代わるのであれば、新代表は、党の中で選挙をして決めるのが当然と思っていた。だが実際は、小池さんと周辺だけで彼女の特別秘書の野田数(かずさ)さんに決めてしまったそうだ。

 僕はだまされたような気持ちになった。そんな決め方でいいの?と思った。野田さんは代表に就いてはいけないと思う。都民ファーストの議員ではないし、都議だった五年前、大日本帝国憲法が現存するとした請願に賛成したような思想の持ち主だからだ。

 もし野田さんが代表だったら、選挙の結果は違っていたのではないか。都民は、何を期待して都民ファーストの候補に投票したのか。選挙後に代表を勝手に代えるなんて、今後も何が起こるかわからず、都民は不安だと思う。
 都民ファーストの会は名前通り、都民のことを最優先に考えてくれる良い党だと、僕は思っている。その期待に応えられるような代表の決め方をしてほしい。(引用終わり)

 マスコミはなぜ、こうした真っ当な論を掲げようとしないのか。菅谷君が指摘する通り、この野田数なる人物は、現行憲法の無効を主張し、皇室典範についても「国民を主人とし天皇を家来とする不敬不遜の極み」「国民主権という傲慢な思想を直ちに放棄すべし」などと主張する極右思想の持ち主のようだ。代表交代は、十四歳の少年を「だまされたような気持ち」にさせた小池都知事の正体をさらけ出したということだろう。枕はここまで。

(工藤 稔)

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