インターネットの世界だけでなく、雑誌や一部新聞、テレビのバラエティ番組などなど、河野太郎へのすさまじいネガティブキャンペーン、高市早苗へのへどが出そうになる称賛キャンペーンがまき散らされた結果、岸田文雄氏が自民党の新総裁に選ばれた。

 岸田氏は、総裁選後の記者会見で、次のように語る。

 ――国民の声が政治に届かない、政治の説明が心に響かない。切実な声を耳にした。民主主義そのものが危機にあるという強い危機感を持ち、わが身を顧みず総裁選に真っ先に手を挙げた。

 岸田新総裁の党役員と閣僚の人事を眺めると、彼が言う「強い危機感」とは、次のような方たちを危機から救い上げたい、という意味なのかと納得する。

 ――森友学園、加計学園、桜を見る会、その前夜祭で政治資金規正法や公職選挙法に抵触する数々の疑惑を抱え、国会で自ら百十八回の虚偽の答弁をしたと認めた元首相。二〇一九年参院選で河井案里氏陣営に一億五千万円が振り込まれた疑惑に関わり、今も検察が捜査しているとされる。

 ――安倍内閣で経済再生相を務めていた二〇一六年、自身や元秘書が都市再生機構(UR)と土地の補償交渉をしていた建設会社から、大臣室などで自身が現金百万円を、秘書が五百万円を受け取ったと認めた。疑惑発覚後、大臣を辞任。国会に「睡眠障害」との診断書を提出し、国会を四カ月欠席した。

 自民党の支持者であろうがなかろうが、このような「黒に極めて近い灰色」の履歴をお持ちの方々が要職を占め、政治を差配する状態をヨシとはしないであろう。何より、子どもの教育にとって良くない。「あんな人にだけはなってはダメよ」という方々が、国の政治を牛耳っている。そんな国に、社会に、明るい未来なんてあるものか。

 安倍晋三元首相は、「悪夢のような民主党政権」という言葉を繰り返し使った。二〇〇九年九月、鳩山由紀夫首相から二〇一二年十二月、第一次安倍政権の誕生までの三年三カ月を指す。

 振り返れば、正直に言って幼稚で、未熟で、青臭い政権だったと思う。官僚をコントロールできなかったのも国民の支持を失った要因だったろう。原発ひとつとっても、東京電力福島第一原発が壊滅的な事故を引き起こした翌年、二〇一二年六月、当時の野田佳彦首相が記者会見で「国民の生活を守るために大飯原発の三、四号機を再稼働すべきというのが、私の判断であります」と述べたニュース画像を私は忘れない。「裏切られた」と感じた。「二度と信じるものか」と毒づきたくなった。

 九月九日付朝日新聞デジタルに「寛容になれと不寛容に主張 支持広がらぬリベラル勢力、固定客見誤る」と見出しが付けられた記事が載った。以下、そのリード。

 ――内閣支持率が低下しても、野党第一党の支持率は一桁台のまま。迫る衆院選で、リベラル勢力は政権批判の受け皿になれるのか。安倍政権下の国政選挙で六連敗した理由は、野党も支持者も潔癖主義に陥っていることにある――。政治学者の岡田憲治さんはリベラル派の立場から、リベラル勢力をそう批判し続けてきた。そして自戒の念から「友を失っても仲間を増やせ」という境地にたどり着いたという。その真意を聞いた。

 インタビュー記事は、政権交代、あるいは与野党伯仲の国会を実現するための野党のあり方を具体的に指し示す。そのサワリを。

(工藤 稔)

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