――三十代、四十代の知人は、ゴルフをしていることを絶対に会社の同僚や上司に言わないんだって。誘われるのがイヤだから。首都圏なんかでも、最近は一人でラウンドOKというゴルフ場が増えているらしい。だから、一人で回るんだって。ゴルフって、複数で回って、互いのプレーをほめたり、“握ったり”するのが楽しいじゃない。一人でゴルフして何が面白いんだ? って思うけどね。全く理解できない感覚だよね…。

 彼は五十代。私は七十歳だが、感覚としては近い。一人キャンパーや一人ゴルファーを「おかしいんじゃないの?」と見る、オジサン世代だ。この隔世の理由は様々あるのだろう。おそらく成長の過程、育った環境の差異か。兄弟姉妹が少ない、両親が共稼ぎで一人でいることが多かった、テレビゲームでいつも一人遊びをした…。

 他者との関りを重視しない人たちと共に生きる。大げさに言えば、文化や習慣の異なる外国人と同居するようなものかも知れない。いや、もっと難しいか。最初は笑ったが、話しているうちに、だんだん寂しく、むなしい気持ちになった。「コロナもそうだけど、世の中、どうなっちゃうんだろうね」と言葉を交わして彼と別れたのだった。枕はここまで。

 記事にあるように、文化会館小ホールのどん帳が落ちる事故があった。子ども向けのショーの開催中だったという。けが人がなくて幸いだった。

 本紙記者の取材によれば、どん帳は四十七年前の同館オープン時から使われている。担当者によると、年二回、目視による点検を行っている。直近の検査は、ちょっと前、十一月末に目視による検査を行い、「異常なし」だったそうな。つまり、検査は何の役にも立たなかった、ということだ。もっと言えば、形だけの、アリバイづくりのための検査。

 どん帳が落下したのは四日。教育委員会が落下の事実を公表したのは九日になってからだ。五日も遅れたのはなぜか。担当者は、「けが人がいなかったため」と説明したという。意味が分からない。仮にけが人が出たら、救急車が呼ばれ、警察が駆け付けるだろうから、黙っていても話は伝わる。けが人がいなかったから、黙っていようと考えたのか。

 話は飛躍する。今津寛介市長に提案しよう。この文化会館もそうなのだが、公民館や図書館、そして支所など(まだまだあるだろうが思いつかない)、市民と行政が接する部署、あるいは施設に、有為な職員を意識的に配置してはいかがか。すでに必然的にそうなっている部署や施設もあるに違いないが。もちろん、本庁舎の、一般市民に知られざるポジションで、市民に役立つ仕事をしている有能な職員もいていい。だが、今回の事故の例をみると、「仕事をつくり出す」職員が、この現場に配属されていたら、「目視の点検」の実態も変わっていたように思えてならない。

(工藤 稔)

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