今にドサッと来るぞ、イヤになるほど降るぞ、と予測はしていたが、やはり来た。十八日午前二時過ぎ、小用に起きた時に窓を覗いたら、サラッと降った感じだった。ところが、六時前に起き出して見たら、車の上に十五㌢も積もっているではないか。あわてて家人に声をかけ、今季、三度目の出動となった。

 さて、その除雪である。小欄は、二〇一四年秋の市長選挙の前、二人の立候補予定者の公約を取り上げ、「究極の消去法で投票する」とおっしゃる有権者の話を書いた。一人は「公立大学の開学」を、もう一人は「旭川を日本一の除排雪の街にする」を公約に掲げていた。私は、次のように書いている。

 ――分かりやすいと言えば、そうかも知れないが、これから市長を目指す人の、最も力をいれたい仕事が「除排雪」ですかぁ。力が抜けちゃうなぁ。あのねぇ、雪は春になれば解けて消えちゃうんですよぉ。何より、現在も旭川の除雪態勢は、北海道で一番、つまり日本一だと思いますよ。何を基準に日本一と呼ぶかは別にして、札幌を見なよ、留萌はどうする、北見は、岩見沢は…、と考えれば分かるじゃないか。降雪があった朝、外に出ると道路はきれいに除雪されている光景を私たち旭川市民は当たり前のことと受け止めている。ところが、道内をあちこち転勤して歩いた友人に言わせれば、「旭川はすごいよ。むしろ、こんなに除雪にお金を使わなくてもいいと思うけどね」というレベルなのだ。(引用終わり)

 地方都市の財政は厳しさを増す一方だ。春になれば自然に消えてしまう雪である。その始末に三十億円もの予算を未来永劫使い続けることは、人口減少を考えても無理だと、誰でも分かる。加えて、除排雪を請け負う土木建築業者や、除雪機械やダンプの運転手の不足も年々深刻さを増す。だから、ここ十年ほど前から、旭川市は除排雪業界とタイアップして、市民・行政・業者の三者による「協働」体制を構築することで、少ない予算でも冬を乗り切る方策を模索し続けてきた。

 例えば、高齢者や障がい者の世帯が対象の「住宅前道路除雪」。除雪機が通った後に残される雪の塊りなどを取り除く作業を二年前から町内会などに協力金を支払って実施するようになった。対象世帯が増え続けて、業者の手に余る事態になりつつあったのだ。二冬前、六町内会が八十世帯に対して始まった「テスト事業」は、今冬は町内会など五十四団体、対象は三百八十六世帯に広がっている。町内会の中には、「高齢者の住宅前の除雪は以前からやって来たこと」と協力費を受け取らずに実施している地域もあるそうだ。助け合いの心。これぞ「協働」である。

 今津寛介市長は、初当選した秋の選挙で「生活道路の排雪回数を二回に倍増」を公約に掲げた。取材してみると、その公約に一票を投じた市民が少なからずいると知って、私などは仰天する。もちろん、ひと冬に何回かは雪道を恨めしく思う目に遭う。昨冬などはザクザク道路にはまって、本気で泣きたくなった。選挙を控えている、という事情もあったのかも知れないが、前市政下、二〇二〇年度の除排雪費は補正予算を三回組み、過去最高の三十五億二千万円に達した。

 市長が交代した今冬、当初の除排雪費は二十九億四千万円だったが、新市長は早くも補正予算四億三千万円を計上した。担当の市土木部によれば、「あらかじめ予算を措置することで、除排雪業者が安心して人員を確保できるなどのメリットがある」と説明する。が、背景に市長が掲げた公約があるのは間違いない。

 水道料金を値上げし、生活保護世帯や独り暮らしの高齢者の減免制度を廃止しなければならないほど財政がひっ迫している市が、どうやって四億三千万円をひねり出したか。前年度からの繰越金と、国家公務員と同じ水準で減額された市職員の冬のボーナス分をかき集めて、確保したのだそうだ。

(工藤 稔)

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