九月六日号の小欄で、美瑛町の竹内憲一さんからのメールを紹介した。ごく簡単におさらいすると、『ケロコとラッコのおいしい話』(八月三十日号)の中にあった、「道産小麦のパンって本当に美味しいのだろうか、安全なのだろうかという疑問もわく」という表現について、「どのような根拠で書いているのか? この記事を読んだ読者の中には『道産小麦は安全でないかもしれない』と思い、道産小麦のパンを敬遠する人もでてくるのではないか」との疑問とご指摘だった。

 メールには、竹内さん自身が農業に携わっていること、日本の残留農薬基準や農薬の認可基準がEUほど厳しくないこと、日本の風土から農薬使用回数がEU諸国よりも多くなることも承知しているとあり、その上で、日本の農薬使用基準は、仮に希釈倍率を誤って十倍にしても人体に有害でないレベルに設定され、農家は農薬取締法で定められた使用方法、使用基準等を厳密に守っている、と書かれている。

 竹内さんは「美瑛町では町を挙げて、美瑛小麦の推進キャンペーンを行っています。こうした憶測(?)記事を出すことは、関係者の多大な努力に水を差す行為であり、残念でなりません」と抗議の気持ちを伝えてくれた。

 竹内さんの指摘と抗議に対して、執筆者のライター「ラッコよしき」さんが「舌足らずの原稿でした。不快な思いをさせたことに対し、心から謝罪したいと思います」と頭を下げ、記事を掲載したあさひかわ新聞もお詫びの気持ちを表明したのだった。

 竹内さんとのメールのやり取りの中に次のような文面があった。

 ――一つだけ本の紹介をさせてください。

『世界に一軒だけのパン屋』

帯広の「ますやパン」の経営者を追った本です。
道産小麦でパンを作る、ということに多大な努力を重ねた方です。
農業に携わる者、北海道に住む者として、ただただ敬服します。
もしお読みでないようでしたら、時間のある時にでもご一読いただけたら幸いです。

 早速こども冨貴堂に注文、一週間ほどで手元に届き一気に読んだ。二〇一八年に単行本が刊行され、今年二月に小学館から文庫版が出ている。著者はノンフィクション作家の野地秩嘉(のじ・つねよし)。帯広市に本店を置き、十勝管内に六店舗を展開する「パン屋」の物語である。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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