前週、九月二十七日号のあさひかわ新聞一面は、昨年三月、市内の公園で広瀬爽彩さん(当時14、中学二年生)が凍死した状態で発見された問題で、いじめの重大事態として調査していた市教育委員会の第三者委員会の最終報告書について、市議会で行われた緊急質問(二十二日)を取り上げた。記事は、黒蕨真一教育長の説明、六議員の質問と担当者の答弁、今津寛介市長の発言を詳しく報じている。

 その四日前、二十三日付の北海道新聞。同じ緊急質問を取り上げた記事の見出しは、「最終報告に不満相次ぐ」「公平性『市民も疑念』」「再調査『確実な手続きを』」だった。私は、弊紙の記事を読んだ後、道新の記事を読み直した。そして、何とも言えない違和感を覚えた。質問した六市議の質問の意図が、正確に読者に伝えられていないのではないか、と。質疑した六議員から不満が相次いだのか?高花詠子議員(公明党)が「自殺といじめの因果関係を明らかにし、どう改善するのかが重要だったのに残念」と述べ、高橋英俊議員(自民党・市民会議)が「当初八月末としていた市教委第三者委の最終報告の遅れへの批判や、報告内容の公平性への疑念を市民が抱いていると指摘」とあるが、ほかの四議員の質疑に「批判」という言葉が的確なのかどうか。

 私が注視したのは、あさひかわ新聞の記事にあった能登谷繁議員(共産党)の次の発言。

 ――能登谷は、(第三者委員会の)調査結果が出る前から、今津市長が並行調査や再調査に言及していたことについて「調査結果がわからない中で、内容が不十分だとなぜわかるのか。対策委員会(正式名称・旭川市いじめ防止等対策委員会=第三者委員会)に対し失礼ではないか。調査結果に対する十分な対応を検証を行わず、行政としての手続きもない中で、再調査だけが躍っている。再調査ありきだったのではないか」と迫った。

 改めて説明すると、この対策委員会は、市のいじめ防止等連絡協議会等条例に基づき設置された常設の組織である(委員は五人以内)。今回の調査では、地元の弁護士や大学教授(臨床心理士)、社会福祉士、精神科医ら委員や臨時委員九人で構成された。週刊文春の報道をきっかけに、爽彩さんの死がいじめによるものではないかと関心を集めた後の昨年五月二十一日に第一回会議が行われ、今年九月六日までに四十五回の会議を開催している。

 委員会に対して調査を諮問したのは教育委員会。ところが今回の問題では、その教育委員会も調査の対象である。組織の構造上、委員会の事務局は教育委員会の職員が務める。そのため独立性を担保する目的で、委員長の判断で、関係者からの聴取や資料収集、会議の議事録作成などを委員自らが手がけた(爽彩さんが在籍した小中学校の対象児童生徒八百五十六人へのアンケート調査は、市教委職員が郵送などの作業を手伝ったという)。

 今津市長は昨年九月の市長選挙の前から、前市政の汚点としてこの問題に繰り返し言及してきた。市長に就任した後は、「(二〇二二年)六月までに」などと具体的な期限を切って調査結果の発表を急かした。この間、能登谷議員が指摘するように、調査の内容がまだ明らかにされてもいないのに、「遺族の意向に沿う」として、市長直属の第三者委員会を設置すると明言してきた。今津市長にその意図はないのかもしれないが、私の目には、市長がこの事件を政治的に利用しているように映る。

(工藤 稔)

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