八月三十日号の小欄「あの“ウソつき元宰相”の「国葬」に2億5000万円ですか…」の中で、私は「瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず、李下(りか)に冠を正さず」を引用して次のように書いた。

 ――この男の政治姿勢を俯瞰すれば、すべては我が身や身内、お友達、お仲間にウリやスモモを与えようという姑息な情熱だったであろう。加えて自らの政治的業績を誇示し、政治的遺産を積み上げるためのパフォーマンス。「森友」も「加計」も、「桜を見る会」もその「前夜祭」も、おそらく「伊藤詩織さんの性被害握り潰し」も、自らの保身、あるいは身内偏愛の延長線上にある。分かりやすく言ってしまえば、国民の金で身内やお仲間に“ええかっこしい”をしまくった御仁である。(引用終わり)

 ごくシンプルに言えば、表向きは天下国家のことを考えている風を装いながら、その実は政治を徹底的に私物化した男だった。その最期は、敬愛するジイサンの代から深く関わったエセ宗教集団・旧統一教会によって家族ともども身ぐるみはがされた被害者に暗殺された。「因果応報」ってどんな意味だったっけ…。

 この男が八年八カ月に及ぶ、憲政史上最長の首相在任中に普遍化した“しれっと私物化”の慣行は、脈々と受け継がれる。

 九月六日の毎日電子版の記事の一部を引用しよう。

 ――(前略)東京都港区の増上寺で七月十二日に営まれ、妻の昭恵さん(60)が喪主を務めた安倍氏の葬儀には、儀仗隊約六十人と中央音楽隊約二十人が参列。儀仗隊は安倍氏のひつぎを乗せた霊きゅう車に敬礼し、演奏に合わせて見送った。

 防衛省によると、遺族の意向を確認し、防衛省・自衛隊の弔意表明の一環で参列したという。自衛隊の礼式の目的や意義を定めた自衛隊法施行規則などに基づき、防衛相が参列を指示した。当時の防衛相は安倍氏の実弟の岸信夫氏だった。首相は自衛隊の最高指揮官で、防衛省は「かつての上司に省全体として弔意を表した」としている。(後略)

 記事によると、首相経験者の「家族葬」に自衛隊の儀仗隊が参列したのは戦後初めてとのこと。

 元首相の国葬の費用は、警備費や外国要人の接遇費などを加えると、総額で十六億六千万円になるのだそうだ。

 

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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