前号の小欄「爽彩さんの死 第三者委員会の最終報告に思う」の中で、私は次のように書いた。

 ――私は今回の第三者委員会の報告を機に、新たな段階に進むべきだと考える。遺族側弁護団が発表した最終報告書に対する「所見所(概要版)」には、様々な疑念や反論が列挙されている。それらについて、市長直属の第三者委員会は既存の委員会以上の調査をして、遺族が納得するような報告を導き出せるのだろうか。緊急質問で元教員の上野和幸議員(無党派G)が取り上げた「入水事件」があったのは二〇一九年九月のこと。すでに三年が経過して関係者の記憶は薄れるばかりだろうに。

 ある弁護士によれば、今後を見通せば、相手が市なのか、市教委なのか、当該中学なのかは別にして、おそらく遺族が賠償を求める裁判になる。その場で、遺族が求める様々な疑問が明らかになるかも知れない。(引用終わり)

 もう一人の「ある弁護士」は、「もちろん、亡くなった女子生徒はかわいそうだと思いますよ」とした上で、おおよそこんな話を聞かせてくれた。

 ――今津市長が立ち上げるという直属の第三者委員会は、市長の意向にそう結論を出すメンバーを集めるのだろう。でも、いずれにしろ捜査権も強力な調査権限もない委員会が、これまでの委員会を上回る成果を上げられるとはとても思えない。あくまで私の予推測の域を出ないが、遺族側の弁護団は裁判以外での和解協議を望む、あるいは示談に持ち込むのではないか。

 二〇一一年に大津市で中学二年生の男子生徒が自死したのはいじめが原因だとして、遺族が加害者とされる元同級生らに損害賠償を求めた訴訟は最高裁までいって、いじめと自死との因果関係を認めながら、「親にも生徒を精神的に支えなかった過失がある」などとして、賠償額が四割も減額されている。

 本事案の詳細はわからないが、遺族側は裁判で争う選択はしないのではないか。今津市長の、いじめで自死した女子生徒の遺族に寄り添うという姿勢は、一定程度市民の共感を得ている。だから、世論は示談や和解で市のお金を使うのに反対はしない。市長直属の第三者委員会は政治的なパフォーマンスではないか。

(工藤 稔)

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