それでも、市長の判断、ということになるのだと思う。西川将人・前市長もそうだったが、配下の役人の言うがまま、なのだ。耐震指標が〇・〇〇四という数字を根拠に、建て替えと解体を推し進めてきた市職員の論理が、解体現場を検証することで破綻する可能性がある、だから、現場は絶対に見せられない。その〇・〇〇四という数字を導き出した竣工図(建物の完成時に作成された図面)が間違っていたなんて、あってはならないのだ。誰がなんと主張しようが、疑惑を深めようと、このまま押し切るしかないのだ。過去の過ちは、そのまま闇に葬り去るのが唯一の解決策なのだ。
旧総合庁舎(赤レンガ市庁舎)の解体撤去の差し止めを求める裁判の原告団代表で建築家の大矢二郎さん(80、東海大学名誉教授)が十一月二十五日、現在解体中の同庁舎の現場を開示するよう市に求め、記者会見を行った。解体現場の開示要求は、九月十三日に続き二回目。
大矢さんは、市が「唯一公式なもの」としている「竣工図」が、「本来あるべき竣工図の要件を欠いている」こと。さらに一九九七年に市が行った竣工図をデータとした耐震診断で、同庁舎の耐震指標が〇・〇〇四という極めて低い数字となったが、その前に行った補強工事をまったく反映していないことから、同庁舎の構造は、その後発見された「変更図」に近いと推測。解体工事で露出している柱や梁の鉄筋や鉄骨の状況を調べることで、「竣工図」と「変更図」のどちらがより実態に近いものかを判断できると主張する。
市は一回目の開示要求に対し〝危険〟を理由に「現場の立ち入りを認めない」と返答している。大矢さんは「重機が稼働している現場への立ち入りは危険だが、解体途中で露出した柱や梁の鉄筋の本数を数え、太さを測るだけなので、工事の開始前か、あるいは終了後の三十分もあれば検証には十分」と反論。再度、要求することにしたという。
また「配筋状況が竣工図通りだったら、直ちに訴訟を取り下げることもやぶさかでない。しかし、変更図に沿って配筋されていたことが明らかになれば、市は例え意図的ではなかったにしろ、六十六年間にわたって偽りの情報を市民に提示していたことになる。そのずさんな施設管理と情報管理は、保存・活用の道があったかもしれない貴重な文化財の旧総合庁舎を失う結果を生じさせた。責任は大きい」と断じる。
市の担当者は、「十二月末までには、建物の地上部分はほとんど解体されて、なくなる」ととぼけている。「行政の無謬性」にしがみつく役人体質。解体現場を大矢さんに見せる気など、さらさらないのだ。前市長と同じく、現市長も、言い方は悪いかもしれないが行政の“素人”だ。ただいま勉強中。配下の役人に指導される立場だろう。役人の言うがまま、も致し方ないところか。
それにしても、大矢さん、もう少し早く動けなかったのかい、と正直、思う。
(工藤 稔)
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