「これって、市長が政府に媚びを売るつもりで企画したんじゃないか?」と言って手渡された二枚のチラシ。一枚には「1月11日 旭川冬まつり ポップアップストア オープン イオンモール旭川駅前」とある。もう一枚は、「旭川冬まつり 公式グッズ 1月11日 先行販売」とあって、真ん中に大阪・関西万博のマスコットキャラクター、ミャクミャクをマフラーのように身に着けた、あさっぴーの姿が。右には、あさっぴー・ゆっきりんとミャクミャク、左には今夏開かれる「あさひかわ菓子博」の公式キャラクター、シマエ大福とあさっぴー・ゆっきりんのデザインも。

 二月六日から十一日まで開催される冬まつりに合わせて、実行委員会がタオルとブランケットを販売する、というお知らせだ。市のシンボルキャラクター、あさっぴーとゆっきりんをデザインしたグッズを制作して販売しようということ。ここまでは分かる。だが、なぜ大阪万博のミャクミャクなのか。チラシを見せてくれた友人は、そこに政治的な意図を感じたのだろう。「大阪・関西万博には、多くの国民から批判的な声が上がっている。それを無視するように、旭川市がPRを買って出るなんて、市民として理解できない」と憤る。

 大阪・関西万博は今年四月十三日から十月十三日の百八十四日間、大阪湾に浮かぶ人工島「夢洲(ゆめしま)」で開催される。万博終了後、二〇三〇年には、IR=統合型リゾート(カジノをはじめ、国際会議場や劇場、展示場、ホテル、ショッピングモール等の複合施設の集合体)がオープンする予定だ。

 大阪・関西万博に批判が集まる理由は、会場予定地が地震などに脆弱(ぜいじゃく)な人工島・夢洲であることなどのほかに、このカジノがある。賭博(とばく)を行う施設だ。ルーレットやブラックジャックなどのゲームで金銭を賭ける場所で、日本語で言えば「賭場」である。

 日本は世界一のギャンブル依存大国である。 ギャンブル依存(障害)の有病者の割合は、アメリカ〇・四二%、イギリス〇・五%、マカオ一・八%に対して、日本は三・六%と突出して多い。さらに、ゲーム機の設置台数はアメリカ八十六万台、イギリス四十五万台、ドイツ二十七万台に対して、日本は四百五十七万台と桁違いの数である。

 大阪へのカジノ進出を申請したMGM・オリックス企業連合が二〇二一年十二月に提出した計画によれば、「電子ゲーム約六千四百台をゲーミング区域内に適切に設置する」としている。ここでいう電子ゲームとは、大規模集積回路(LSI)によって制御されるソフトウェア内蔵型のゲーム機のこと。子どもたちがゲーム場で遊ぶ射撃(シューティング)ゲームや、レーシングゲームなども電子ゲームだが、カジノのゲーム機は、“多額の掛金を伴うゲーム”、すなわちパチンコやスロットマシンなどを指す。

 インターネットで検索すると、現在、日本最大のパチンコ店は埼玉県さいたま市にあり、ゲーム機は三千三十台(パチンコ千五百八十四台、スロット千四百四十六台)だそうだ。ちなみに北海道で最大のパチンコ店はマルハン旭川永山店で、パチンコ八百四十台、スロット五百八台、合わせて千三百四十八台。こうしてみると大阪・夢洲に出現するパチンコ店の規模の巨大さが分かる。

 しかも、パチンコ店の営業時間は、都道府県によって異なるが、ほとんどの場合、午前九時から、午後十一時まで(一部の県は二十四時まで)。ところが、大阪・夢洲のカジノでは、日本最大のパチンコ店の二倍以上のゲーム機をもち、営業時間も終日の二十四時間営業だ。

 十年ほど前になるが、日本メディカルプロダクツの前社長・山本信男さん(故人)に連れられてマレーシアに行ったとき、山の上のカジノを見物したことがある。

(工藤 稔)

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