旭川ゆかりの詩人・小熊秀雄の名を冠した全国公募賞の最終選考会についてのメールのやり取りの中で、選考委員の一人、横浜在住の詩人・佐川亜紀さんから、「二十日に『日韓条約六十年』の記者会見をしました」と知らされた。メールには神奈川新聞や連合ニュース、韓国日報デジタル、韓国の日刊紙・ハンギョレの記事が添付されていた。神奈川新聞の記事の冒頭を引用しよう。

 ――今年は日本の敗戦から八十年、日韓国交正常化六十年の節目となることから、日韓の市民運動にかかわってきた日本の市民らは二十日、政府に対し、植民地支配を正当化するような日韓基本条約の解釈を改め、日朝国交正常化交渉を再開するよう求める声明を発表した。(中略)
 声明は、和田春樹東京大名誉教授や田中宏一橋大名誉教授などの学者や市民運動の代表など二十九人が発起人となり、まとめた。(後略・引用終わり)
 「呼びかけ 二〇二五年、日韓条約六十年を期して、日韓条約の解釈を統一し、日朝国交正常化交渉を再開しよう」と題する声明の要旨は次のようなものだ。
 日韓条約締結から六十年になり、日韓間では人や文化、経済の交流が深まり、対等で豊かな関係が作られつつあるが、両国間には依然として植民地支配に根ざす深刻な問題が未解決なままに残っている。その大本の原因は一九六五年の国交正常化に当たって締結された、日韓基本条約の条文解釈が両国間で分かれたままにあること。「正文」の英文について、韓国側は「偽りであり最初から無効であった」と主張、日本側は「併合条約は有効であり、合意により併合した」と真逆の解釈を主張した。つまり、日本側は日韓基本条約締結時には朝鮮植民地支配を正当化し、謝罪を拒み、反省しなかったということ。それが禍根を残した。

 そして声明は次のように呼びかける。

 「二一世紀も四分の一を過ぎた今、前世紀の帝国主義時代の併合を正当化する意味はどこにあるでしょうか」
 声明文はつづく。小渕恵三首相と金大中大統領の一九九八年の「日韓パートナーシップ宣言」、二〇〇二年の小泉純一郎首相と金正日国防委員長による平壌宣言などを経て、日本側の解釈は韓国側に近づいたが、安倍晋三政権時代に日本の植民地認識は六十年前に戻り、その状態が今も続いている。このままでは「両国民の真の和解と協力が成り立つことはありえない」。
 さらに安倍政権は、「日本人拉致」問題を理由に、日朝国交交渉を打ち切り、一三年には、高校無償化から朝鮮高校を排除した、と批判。
 「二〇〇六年以降の経緯を見る限り、圧迫政策の失敗は明らか。国交正常化交渉を再開してこそ、拉致問題解決の道も開かれる。同時に朝鮮との緊張関係も緩和され、信頼関係も醸成されていくだろう。そもそも朝鮮は国連にも加盟し、世界百六十カ国と国交を結んでいるのだ」。
 声明は次のように結ばれる。「敵対から和解へ、対立から協力へ、対等で相互を尊重する精神こそが、真の、そして末永い友好を築く基礎になると私たちは信じます。ウクライナの戦争、ガザの戦争と虐殺を見れば、どのような理由があれ、戦争は決して始めてはならないことが分かります。敗戦八十年、日韓条約六十年である二〇二五年を、朝鮮半島やアジアに生きる市民とともに平和を築く努力をする年にしていきましょう」。

 佐川さんは、一九五四年、東京都生まれ。横浜国立大学卒。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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