「大統領になったら、何でもやれると思い込んでいるのか」、そう感じさせるドナルド・トランプの発言を報じるニュースを読んだり、観たりしてうんざりしている。「ひざまずく」、あるいは「すりよる」「かしずく」という表現が適当と思われるIT企業のトップたち、富豪たち、はてはジャーナリストの「ヨイショ」まで見せ付けられて、テレビの前で「ゲッ」となりそうな日々だ。そんなゲロゲロ気分をちょっとなだめてくれる記事を見つけた。AFP(フランス通信)の一月二十二日配信の日本語版から引用しよう。
――トランプ米大統領は(一月)二十一日、二期目が始まり祝賀ムードに浸る中、LGBTQ(性的少数者)と貧しい移民への「慈悲」を乞う主教の説教を聞くことを余儀なくされた。
ワシントン大聖堂のマリアン・エドガー・バディ主教が説教壇からLGBTQと不法移民のために訴えると、これら二グループを標的とした大統領令に署名したばかりのトランプ氏は顔をしかめた。
この礼拝は大統領就任を記念する伝統行事の一つで、トランプ氏が批判を予期していなかったことは明らかだった。
バディ主教は「大統領閣下、どうか慈悲をお与えください」と静かに語り、米国全体で「恐怖」が感じられると述べた。
主教は「民主党、共和党、無所属の家族には、ゲイ、レズビアン、トランスジェンダーの子どもたちがいる」と語った。また、「米国の農場で収穫し、オフィスビルを清掃し、養鶏場や食肉加工場で働き、私たちがレストランで食事をした後に皿を洗い、病院で夜勤をする人々は、市民権や適切な書類を持っていないかもしれない」「しかし、移民の大多数は犯罪者ではない」と述べた。
最前列に座っていたトランプ氏は仏頂面で、バディ主教を見返したり、目をそらしたりしていた。トランプ氏の家族とJ・D・バンス副大統領もこの説教に驚きと不快感を示していた。
後に記者から反応を尋ねられたトランプ氏は、「良い礼拝だとは思わなかった」「もっとうまくできたはずだ」と述べた。
二十日夜にトランプ氏が署名した多数の大統領令の中には、亡命希望者の入国を一時停止し、不法移民を追放する措置が含まれていた。
トランプ氏はまた、男性と女性の二つの性別のみを認め、トランスジェンダーは認めないと宣言した。(引用終わり)
「今日から、性別は男性と女性の二つのみ、というのが米政府の公式な政策となる」――二十日の大統領就任式の直後の演説で、トランプ氏はそう述べた。
あのねぇ、企業のトップが「うちの会社は、今日から男と女の社員しか認めない」などと口走ったら、どうなると思います? 非難轟轟(ひなんごうごう)で、会社ごと社会から抹殺されてしまう事態にもなるだろう。ジェンダーフリー、ジェンダー平等の世界的な潮流は、たとえ大国といえども一国の大統領の嗜好や思惑ごときで変えられる次元のものではないと思うが、いかがか。
(工藤 稔)
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