農業法人の経営者の友人が、打ち明ける。「ここまで高くなるとは予想しなかったなあ」――。コメの値段のことである。地域の十戸ほどの農家が集まって二〇〇一年に有限会社を立ち上げ、試行錯誤を繰り返しながら、いまは米づくり主体の経営に戻って頑張っている。我が家では、何年も彼が栽培したコメを売ってもらって食べている。

 農家レストランなど多角経営に挑戦したりして、しんどい時期があり一時は生産に集中し販売を止めていたのだが、顧客からの熱いリクエストに応えて二年前から、インターネットの通販を再開した。昨秋、日本中でここでしか栽培していない低アミロース米の元祖とされるブランド米をネットショップで十㌔五千五百円の値を付けたら、新規のお客からの注文が殺到したのだそうだ。常連客からの予約分まで底をつきそうな勢いに、あわてて「予約者限定」に切り替えたという。「一見(いちげん)さんお断り」というわけだ。全国から注文が舞い込んだそうな。

 それほどコメは不足し、値段は高くなっているということだ。家人と買い物に行ったスーパーでコメの値段を見ると、五㌔袋で三千円前後。去年のほぼ一・五倍の値になっている。レジに並ぶ客の多くが重そうにコメの袋を抱えている日は、「特売」のようで、十㌔袋が五千円ほどに値引きされている。
 報道によると二〇二四年産米は、前年よりも十八万㌧多くなる見込みだとされた。ところが、農協など主要な集荷業者が昨年末までに確保できた量は、二十一万㌧少ない。農水省は、この二十一万㌧がどこかに秘匿されていると見ているんだと。「流通の目詰まり」だそうな。

 先述の農業者の友人は、その見方を否定する。「農水の見込みが間違っていると思う」と。

(工藤 稔)

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