畏敬する友人から、「ご無沙汰しておりました」とタイトルが付されたメールが届いた。「相変わらず、たまに仕事に行くほかは、一円にもならないことで何だかんだと連日バタクタしておりまして、ついついご無沙汰してしまいます。まあ、何事も頭を使えばボケ防止になるかもと思って引き受けています(笑)」で始まったメールは、「それにつけても『コメ不足問題』『原発“最大限活用”問題』『ラピダスへの巨額の国費投入』などなど挙げきれないほどの腹の立つことばかりで、こりゃ残念ながらボケてなどおれませんな」と続く。
さて、彼が怒る「原発“最大限活用”問題」である。十九日付朝日の社説の見出しは「エネルギー計画 疑問素通りの方針転換」。本文の冒頭を引用しよう。
――政府が第七次エネルギー基本計画を閣議決定した。「原発回帰」への疑義は、ほぼ反映されなかった。多くの課題を直視せずに方針転換を進めても早晩行き詰まるだけだろう。省エネと再生可能エネルギーの拡大にこそ「最優先」で取り組むべきだ。
東京電力福島第一原発事故後の第四~六次計画で掲げてきた「可能な限り原発依存度を低減する」との方針が、削除された。再エネと同列に原発を「最大限活用する」と位置づけ、「次世代革新炉の開発・設置」も明記した。
福島第一の廃炉は展望が見えず、地元の復興も道半ばというのに、事故の教訓を投げ捨てるような転換である。
政府案への意見公募では、原発の扱いについて、多くの疑問が示された。
環境NGOの気候ネットワークは「福島事故の反省を全く踏まえていない」とし、四〇年の電源構成で原発比率を二割とするのも非現実的で、達成できない分を火力が補うのは明らかだと指摘した。日本若者協議会は新増設・建て替えには、「コスト、事故リスク、高レベル放射性廃棄物による将来世代へのツケなど看過できない問題がある」との意見を出した。
だが、公募意見の計画への反映は「懸念の声があることを真摯(しんし)に受け止める」で済まされた。到底納得できない。
そもそも計画案を議論した経済産業省の審議会の委員の大半は原発推進が持論で、議論は深まらなかった。これでは、政策の質が高まらず、社会の理解も広がらない。安定的に政策を進めることもできないだろう。
石破首相は昨秋の総裁選で「原発をゼロに近づけていく最大限の努力をする」と述べていたが、今国会で問われると「そのことが自己目的ではない。再エネの最大限活用と省エネの徹底をした上で国民生活の安定に原発の活用は必要だ」と話した。
変節は明らかで、歴代政権が堅持してきた「原発低減」方針を削除した責任は重い。(後略・引用終わり)
メールの主は、福島県いわき市の出身だ。東京電力福島第一原子力発電所の事故でめちゃくちゃにされた故郷への思いは強い。二〇一一年の事故後、毎年、春に福島に出かけて、被災した人たちの声を聞くなどの活動を続けている。メールには、今年も行く、とあった。以下、その話。
(工藤 稔)
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