美瑛町中町1ノ5ノ35・TEL64-6252

 ここは、美瑛町が観光客でにぎわうようになる前からの、町で一番古い喫茶店。現在、三代目店主を務める笹原成未さん(29)の祖父が、一九六一年に創業した。なんでも「東京にはお洒落な喫茶店がたくさんあるのに、美瑛には一軒もない」と、土木建築士の仕事を辞めて三十歳で始めたのだとか。

 店は、町の農家の人たちなど常連客のたまり場になったが、祖父の病気もあって店はいったん閉店。十年のブランクの後、旭川の福祉施設に勤めていた成未さんが、「祖父や昔の常連客を元気づけたい」と三年前に店を復活させた。

 昔は純喫茶だったというが、復活した店は食事も売り物。積極的に地元の食材を使い、地元客や観光客で連日にぎわっている。一番人気は、ランチ二十食限定のいろどりランチセット(千二百円)。訪れた日の内容は、インゲンのごま和え、ニンジンとゴボウなどの煮物、海鮮キムチ、キノコとニラの揚巻など、おかずが野菜を中心に九種類。それに、雑穀米ご飯と味噌汁、デザートが付く。美瑛の大地の恵みが詰まったように彩り鮮やかで、ボリュームたっぷり、しかもヘルシー。

 このほか、ココナッツミルクがベースで、一度食べたら病み付きになるというグリーンカレー(七百五十円)、昔ながらの太麺のナポリタン(同)、昨年まで西神楽で親戚が営んでいたカフェ「タイムトンネル」の人気メニューを引き継いだスペシャルドリア(九百五十円)など、味も価格も気取らない品をそろえている。

 「実は、美瑛の中心街には地元の女性が気軽に入れて、おしゃべりできる店が少ない。だから、ゆっくりおしゃべりできる店を目指しています。いま、地元の野菜だけでなく、美瑛豚を使ったメニューも考えています」と成未さん。

 定休日は木曜日。営業時間は午前十一時~午後六時(金、土曜日は午後十時)。(フリーライター・吉木俊司)

ケロコのひとことメモ

 好きな町、美瑛。お気に入りのお店も何軒かあるけど、ここは知らなかった。とても落ち着く店内。客と、お店の人の会話が聞こえてきて、なんだか楽しい。

 メニューで、色んな物が少しずつのセットを見つけると、ついそれにしてしまう。「いろどりランチセット」。他の店では、ごはんのおかずになるものが少なかったり、あんまり美味しくないものが入っていたりと、残念なことも多い。でも、ここは違った。野菜中心なのだけど、一品一品手をかけていて、とてもおいしい。

2019年08月27日号掲載