東川町北町3ノ1ノ4・TEL080-9340-1450

 変わった名前のパン屋だなあ。店主の市場梨沙さん(31)に聞いてみたら「名前を数字にすると18。開店日も、“いい市場の日”ということで、去年の11月18日にしたんですよ」。

 市場さんは、昨夏まで北海道療育園の看護師をしていた。ところが、患っていた難病の網膜色素変性症が進んで視野が狭くなり、仕事に支障が出るようになった。そこで、自宅を改装し、もともとパンを焼くことが好きだったのもあって、パン屋を開店したのだという。

 パンへのこだわりは、春よ恋、キタノカオリ、春の香りの青い空など、何種類もの道産小麦を使っていること、バターとトランス脂肪酸が少ないマーガリンを併用していること、そして「せっかく看護師だし、無添加、無着色の体にいいもの」と材料も厳選している。

 販売しているパンは、全部で六十種類ほど。お勧めはまず、スペルト小麦を使ったカンパーニュ(三百六十円)、角食(四百円)など。スペルト小麦は古代から伝わる穀類で、高血圧、高コレステロール、糖尿病などの改善に良いスーパーフードなのだとか。その手のパンって、おいしくないことが多いけれど、食べてみると普通のパンより味わいが深く、しかもしっとりとしている。

 続いて、抹茶の豆大福(百四十円)。四種類の甘納豆と求肥が入っており、まさに抹茶ぜんざいのパン版といった美味しさ。量り売りのちび96(クロワッサン)はバターの香りが際立ち、ゴマとの相性も抜群。これは、ビールのつまみにもいける。取材後、十種類ほどのパンを買ってきたが、どれもこれも市場さんの情熱が詰まっていた。

 市場さんは、毎日午前一時からパン作りを始める。視野が狭いことから、体中やけどだらけ。二人の子どもと一緒の時間が少ないことも悩みの種。でも「目が見えなくても、できることがあるんだよ、と子どもたちに伝えたい」

 定休日は水曜日と第二、四木、日曜日。営業時間は午前八時(土日祝日午前七時三十分)~午後五時。(フリーライター・吉木俊司)

ケロコのひとことメモ

 東川は、お洒落でおいしいお店が多くて大好き。そして、パン屋がまた一軒オープンした。小さなお店だけれど、次から次へとお客さんがやって来る。

 少しずつ色んな種類があり、選ぶのも楽しい。小さめなので3個、いや4個は食べられる。パン作り大好きという市場さんが、丁寧に作っている。

 市場さんに「どれが好き?」と聞くと、抹茶の豆大福だという。想像以上においしくてびっくり。4種類も甘納豆を入れるなんて、本当にこだわっている。次に行ったら5個、買ってこようかな。

2021年03月16日号掲載