前号では、西川市政が進める新市庁舎建設について、一九五八年に竣工した現「赤レンガ庁舎」を「ローマで言えば、コロセウムのようなものだろう。この建物を壊すというのは、このまちの歴史を壊すことだよ。残して、ミュージアムとして使うしかない」と言うイタリア・ローマ出身の男性の話を紹介した。歴史的価値を獲得しつつある建築物を壊すか否かの判断は、価値観とか文化度にまで及ぶ、極めて根源的な話なのだと思う。

 十四日付北海道新聞は、「総合庁舎前庭に新設」の見出しで、旭川市が新庁舎を現在の総合庁舎と市民文化会館の間にある広場に建設する方針を固めたと報じた。この方針を盛り込んだ基本計画の骨子を五月中にまとめ、六月の庁舎整備検討審議会に諮問する、という。

 記事は一切触れていないが、建設場所がここに決定だとすれば、現「赤レンガ庁舎」が残される可能性は、ほぼないことになる。

 旭川で建設関係の仕事をされている男性から手紙をいただいた。「旭川市庁舎建て替えに物申す」とある。要旨を紹介しよう。

 ――旭川市庁舎の建て替えについて報道されるたびに引っ掛かることがある。それは「老朽化」という言葉。古くなった建物を建て替えるというのは一般的な感覚だが、では何をもって古くなったというのだろう?

 現在の旭川市役所が完成したのは一九五八年十月。五十八年が経過している。「旭川市役所は建築後五十八年経過して老朽化しているから、建て替えを行う」。よく聞きませんか?

 そこで先日の庁舎建て替えに関する市民説明会に参加した。私は「老朽化していると言いますが、具体的に何がどのくらい老朽化しているのですか?」と質問した。総務課長さんは言葉に詰まった。「設備が古くなって…」。

 確かに配管や電気などの設備はとうの昔に古くなっている。これらは二十年も経てば古くなるから、常に更新していく必要がある。

 私は「鉄筋コンクリートの躯体が五十年かそこらで老朽化するなんて事実は聞いたことがありません」「鉄筋コンクリート構造物の寿命はゆうに百年を超えるはず」「鉄筋コンクリート構造物が五十年足らずで老朽化してしまうような間違った認識を広めて頂きたくない」と強く求めた。

(工藤 稔)

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