企業経営者の友人らと一杯やりながら、市庁舎の建て替えの話になった。私が「市議会議員の中にさえ、新しい庁舎が建ったら、今は貸しビルに入居している農政部や教育委員会は新庁舎に入って、“タコ足状態”が解消されるって勘違いしている人がいるんだぜ」と笑うと、「えぇ? タコ足はそのままなの?」「家賃は払い続けるわけ?」「それじゃあ建て替える意味、ないじゃない」。大げさではなく、座は騒然となった。

今号一面にあるように、市議会の自民党・市民会議(自民会議)の安田会長と杉山議員(副議長)が、西川市長と面談し、市が公表した新庁舎の「基本設計案」について、「賛成できない」と伝えたという。その理由の一つが、「現在賃借している二つのビルに入居する部署が新庁舎に集約されないこと」とある。

農政部は、四ノ九の朝日生命ビルに、市教委は六ノ八のセントラル旭川ビルに入居している。二つのビルを合わせた賃借料は、〇八年から一七年までの十年間で約五億七千五百万円。月額四百七十五万円である。新庁舎が完成したら、農政部も市教委も新庁舎に移り、賃借料を払う必要はなくなる、と多くの市民は勘違いしている。市議会議員の中にさえ、そう思い込んで、基本構想から、基本計画、基本設計と議論に関わって来た方がいるのだから、一般市民の勘違いは当然だろう。

自民会議が、この土壇場とも言える時点で設計案に「反対」の立場を明確にしたきっかけは、新庁舎の一階部分を「市民活動や交流の場」として使うという設計案への違和感である。兆候は、一月に市議会史上初めて行われた、総務常任委員会(上村ゆうじ委員長含め八議員)での委員間討議の場ですでに見られた。

一階に、市民に利用させるという会議・集会スペースや、市政やイベント情報のほか、地場製品などをPRする「シティープロモーション」なるスペースを配置するというレイアウトについて疑問が噴出したのだ。

「総合窓口は一階に置くべきだ。市民活動の支援機能のスペースを設けるために総合窓口を置くスペースがないというが、それを一階に置くことで、賑わいが演出されるのか疑問」
「新庁舎を『市民が集うシビックセンターとする』としているが、何をやろうとしているのか分からない」
「シビックセンターとしての役割は、当初は建て替えの計画があった市民文化会館と関連させながら、並行して考えなければ難しい」

いずれも的を射た指摘である。委員間討議は三回行われ、三月、上村委員長は「シビックセンターとしての具体的な利活用について、市民や議会に対し説得力ある説明を」と求める意見書を提出している。その後の市民の意見を聞くパブリックコメントでも、市が示した一階部分に「市民活動や交流の場」を配置する案に対する反対の声が多数寄せられた。しかし、市側は議会の意見にも、市民の声にも耳を貸そうとせず、一階を「市民活動や交流の場」とする案に固執し続けている。

私は小欄で、現赤レンガ庁舎の活用も含めて、時間をかけて検討すべきだと繰り返し主張してきた。小中学校の煙突にアスベストの使用が確認されても、「財政が厳しいから、全部の煙突をすぐに改修するのは難しい」ほどの、お寒い台所事情を抱える行政が、百億円以上、下手をすると百三十億円、百四十億円もの巨費を投じて新庁舎を建てるというのだ。市民の声や市議会の意見を尊重するのは当たり前の話ではないか。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。