私の名刺の肩書は「代表取締役・記者」となっている。三十六歳のとき、地元新聞社の「記者募集」の広告を見て応募した。筆記試験と面接を受けて、どうにか採用され、朝日OBの大先輩から「記者の心得」などを指導された。忘れられない言葉がある。

 ――新聞記者の名刺一枚あれば、臆することなく誰にでも会える。市長にだって、医大の学長にだって、会えるんだ。それくらいの気概を持って仕事をせい。

 課長とか、部長とか、取締役とか、どんな役職や肩書よりも「記者」の方が上なんだと叩きこまれた。その教えを忘れないように、社長に就いたとき、名刺に「代表取締役」に「記者」を付け加えた。もう三十六年も昔の話である。大新聞社の方と名刺交換をして、「ほう」と驚かれることがたまにある。そんな方とは、その後、大抵は仲良くなれる。

 政治部などない、吹けば飛ぶような規模の新聞社だから、偉い政治家へのオフレコ取材の経験はないが、役所や民間企業の経営者でもオフレコの話はある。「教えるけど、書くなよ」のレベルである。

 以下、五日付毎日新聞二面の記事のリード。

 ――岸田文雄首相は四日、性的少数者や同性婚のあり方を巡って、差別発言をした荒井勝喜首相秘書官の更迭を急いで決めた。「政治とカネ」の問題などで四閣僚を辞任させたときには見られなかったスピード感だ。通常国会では二〇二三年度当初予算案の審議のさなかで、防衛力強化や少子化対策の財源論議に集中したい政権が、不祥事の影響を広げないよう腐心した様子がうかがえる。

 新聞やテレビでも繰り返し報じられているから省くが、三日夜、荒井首相秘書官が記者団のオフレコ取材で、(同性婚制度導入について)「社会が変わる」「社会に与える影響が大きい」「マイナスだ。秘書官室もみんな反対する」「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」などと発言してクビが飛んだ、あの事件である。

(工藤 稔)

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