7ノ8、姫小路・TEL080-5720-5098

 三・六街の人気居酒屋の一つだった「両国」が閉店したのは、今年三月のこと。新型コロナウイルスの影響をもろに受け、客足が激減したためという。もう、あの名物の五目あんかけ焼きそばは食べられないのか、とケロコさん同様に僕も思っていたら、同店で働いていた菊地豊さん(65)が小さな店を姫小路に開店したという。

 厨房が狭いうえに、たくさんの客も見込めないことから、もうひとつの名物だったビーフシチューは無理だけれど、焼きそば(七百五十円)の方は前日までに予約すれば用意してくれるというから、旧両国ファンにはうれしい。

 菊地さんは、店名にした岩手県奥州市出身。旭川の自衛隊に勤務したあと、両国で四十三年間も料理人として腕を振るってきた。この店もその両国の味を引き継ぎ、魚介類などの仕入れ先も同じ。壁に張ったメニューを見ると、豚ロースとんかつ(八百円)、豚生姜焼き(六百円)、とり串(一本百十円)、自家製しめさば(八百円)、本日のサービス品・本マグロ山かけ(六百円)など、どれも安いこと。「お客さんがここまで来てくれるだけでありがたいのに、その上美味しいと言ってくれる。だから、原価にちょっと毛の生えたぐらいにしています」と菊地さん。

 一番人気のカツカレー(千円)をいただいてみた。サクッと揚がった柔らかいカツの大きなこと。ルーの中にも、豚肉がごろごろと入っている。「普通に家庭で作れる味」と謙遜する菊地さんだが、なかなかに美味しい。酒の締めの一品にもぴったりだ。今度は、ぜひとも一杯飲みに行って、両国と同じぐらい美味しい品質という本マグロを注文しよう。なにしろ、飲んべえの僕には酒(日本酒三百五十~四百円、瓶ビール五百円)も安いことだし…。

 不定休。営業時間は午後三時~九時。(フリーライター・吉木俊司)

ケロコのひとことメモ

 「両国」のあんかけ焼きそばとビーフシチューが好きだった。閉店してもう食べられないのかと思っていたら…これが食べられるという。

 そのお店をこっそり教えましょう。なぜ「こっそり」かというと、お店がとても小さいから。姫小路の「館」の後と言えば分かるかな。ここで料理しているのが、両国にいた菊地さん。

 まだオープンして間もないため、メニューも試行錯誤していて、あんかけ焼きそばは正式にメニューにはないみたい。でも、お願いして作ってもらったら、やっぱり美味しい。

2021年08月24日号掲載