豊岡8ノ2ノ1
TEL74-5357・090-2818-7781

 この店、僕が追い求めていた理想の和食店かもしれない。オーナー料理人の水越友亮さん(45)の話を聞きながら、お勧めの豆皿盛りを食べているうち、突然そんな気がしてきた。

 メニューはなく、おまかせのみ(料理のみ五千円から)。厳選した鮮魚と野菜などを、多彩な調理法を駆使して出してくれる。豆皿盛りはコースの一品で、この日はあん肝、アスパラのお浸し、本マグロのたたき、銀ガレイの煮付、サクラマスの南蛮漬け。手間暇かけているのが伝わってくる、どれもこれも絶品の味。「甘み、苦み、塩味、酸味、旨味の五感を感じてもらえるような構成にしています」と水越さん。これじゃ、酒がきりなく飲める。

 店で使っている魚介は旭川の市場を通さず、本州物は東京・羽田市場から、道内物は親しくなった各地の漁師さんから直接送ってもらう。神経を抜いたものか、最低でも生き締めの新鮮なものしか使わない。年間に仕入れる魚介類は、高級魚だけでなく、各地の珍しい未利用魚など五百種類にも及ぶというから、美味しい魚にかける情熱は半端ではない。

 もう一品、ランチに出している海鮮丼(デラックス三千七百六十円。他に二千六百五十円、四千五百円もあり)をいただいた。丼からはみ出すように盛られているのは、カキやホッキ、本マグロ、キンメダイ、太刀魚、カワハギなどなんと十三種類、それも三人前の量。こんなぜいたくをしていいのだろうか…。

 水越さんは、出身地の札幌で修業し、十四年前に独立してこの店を開店した。日本酒の利き酒師の資格を持つ奥さんと二人三脚で店を続けてきた。料理と同様に日本酒のメニューもなく、奥さんが料理に合わせて選んでくれる。

 不定休。ランチは、鮮魚の到着時間に合わせて午前十一時~正午ごろから。夜は前日までの完全予約制で、午後六時~十一時。(フリーライター・吉木俊司)

ケロコメモ
 噂には聞いていたけれど、まだ行ったことがなかったお店。先日、東京からお客さんがいらして、ここの常連の友だちが予約してくれた。

 いやぁ、びっくりしました。料理の1品1品がきれいで美味しく、本当にすごい。まず小鉢がずらっと出て来て、食べたことのある素材でも、食べたことのない味。

 そして、魚は産地直送。これですよ、と発泡スチロールからピッカピカの魚を見せてくれて…。

 お昼ご飯も食べられる。教えたくないけど、教えたので、ぜひ行ってみて。

2022年05月10日号掲載