民間企業なら、株主から「社長交代」を要求される事態に発展するだろう。

 二〇一五年春に開店したイオンモール旭川駅前にヒトの流れが集中する対策として、旭川市は「キャノピー」を設置した。雨や雪が降っても、駅前から買物公園、あからさまに言えば西武旭川店にヒトを誘導するのが目的だった。

 二〇一四年(平成二十六年)五月六日号のあさひかわ新聞に、キャノピーの設置は、西武旭川店を運営するセブン&アイホールディングスそごう・西武の経営者からの強い要請を受け、西川将人市長が決めた、とある。記事は、「イオン進出の影響で西武旭川店の売上がダウンした時は、撤退も辞さないと西武側が発言した」と報じている。そんな事情があって、キャノピー設置は市長主導で急きょ浮上した。記事は、市幹部の「通常、市のトップが当事者に対して『やります』と約束したら、実行しなければならないのは常識だ」との談話を紹介している。

 市は、二〇一五年度に三億二千万円をかけて、JR旭川駅前の駐車・駐輪場前の宮下通歩道部分に六十六㍍、宮下通を渡った買物公園の西武旭川店前に九十九㍍のキャノピーを設置した。二〇一七年度までの三年間に総額九億七千万円を投じ、駅前広場のバスターミナルから、宮下通の横断歩道を含めて、一条通までの買物公園の両側に設置する計画だった。

 ところが、今年三月、西武は突然、旭川からの撤退を発表した。市は、二〇一六年度予算に四億四千万円を計上し、宮下通の横断歩道に、大掛かりな(要約すると、無様な、みっともない、景観台無しの意味)キャノピーを設置する計画を進めようとしていた矢先、である。情報収集能力の欠如、のほほん、なめられている、おばかさん…。何ともお粗末な話ではないか。

 ご存知の通り、西武旭川店は九月末で閉店した。そして今月十八日、今号の本紙記事にもあるように、西武A館(地上八階地下一階)は解体されることが明らかになった。今年十二月から来年十月までの間に、解体工事が行われるという。

 現在の旧西武A館前のキャノピーは写真の通りだ。ご丁寧に、A館正面玄関の壁の窪みにまでキャノピーが伸びている。西武の幹部に「撤退」をちらつかされた西川市長の“ビビリ”を象徴するような、気遣いあふれる設計ではないか。

 

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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