前週、九月十二日号の一面で、解体が既定路線になっている現・赤レンガ市庁舎について、旭川市が実施した調査で、解体の論拠とされてきた耐震診断の数値が変わる可能性があると報じた。経過を軽くおさらいすると。

 ――現・赤レンガ市庁舎は一九九七年(平成九年)に、竣工図に基づいて行った耐震診断で、構造耐震指標(Is値)が三階部分で「0・004」という極端に低い数値だと公表された。西川市政になって急速に進められた市庁舎建て替え、現庁舎の解体計画の一番の論拠は、この「0・004」という数値だった。

 竣工から六十年を経過した、旭川では数少ない歴史的建造物、しかもこのまちの小中学校をはじめとする公共施設群の〝お手本〟となった「名建築」を残して活用すべきだと主張する市民グループ「赤レンガ庁舎を活かしたシビックセンターを考える会」(代表・大矢二郎東海大学名誉教授)が、建設に関わった元市職員の「道の指導で耐震補強をした」との証言を掘り起こし、市長に対して今年六月、資料の徹底的な調査を求める要望書を提出。そして見つかったのが竣工図とは異なる図面(変更図)だった。

 竣工図と変更図では、コンクリート柱の鉄筋の太さや数に違いがあるため、市は今月二日、庁舎の一・二・四・六・八階の五カ所で、コンクリート柱の一部を削り、鉄筋の太さや数を調べた。結果は、竣工図とも、変更図とも一致しなかった。その詳細は、前号を参照されたいが、要約すれば、四~八階の高層階では鉄筋の数が竣工図や変更図よりも一本少ないか、同数だが、一階と二階の低層階では、耐震診断に使われた竣工図よりも数は二本増え、太さも増している。

 調査結果を受けて市が出した結論は、「調査結果は、いずれの図面とも違っていたことから、変更図は信頼性があるとは言えない。竣工図とも違っていたが、庁舎の構造を示す図面としては、竣工図が現在存在する唯一公式なもの」。この日本語、理解できます? いずれの図面とも違っていたのだから、いずれの図面も信頼できない、と言うなら分かる。論理が無茶苦茶。そのデタラメな論理によって導き出されるのが、「一九九一年の耐震診断の結果を評価する」、そして「改めて耐震診断は実施しない」。

 「市民の会」が西川市長に提出した要望書には、「私たちは新庁舎の建設そのものに反対する立場ではない」とした上で、「二十年前に行った、たった一度の診断だけで建物の構造的な評価をすることに疑問を呈し、医療でいう『セカンドオピニオン』に倣(なら)い、多面的な手法や評価をしたうえで、慎重な判断をすべき」と論理的な提案をしている。そして、市民の会が予測した通りの結果が、今回の調査で判明した。

(工藤 稔)

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