この国はいつから、こんな茶番や騙し討ちが平気でまかり通るようになってしまったのだろう。例えば、十月二十九日の衆院、安倍首相の所信表明演説に対する自民党の代表質問に立ったのは、稲田朋美・総裁特別補佐。総裁特別補佐の役職に就いている人が、総裁に質問する。ね、笑っちゃうでしょ? 首相は「堂々とやっていただいた」と評価したんだと、ハハハのハ。もっと酷いのは、沖縄・辺野古。弱い立場の国民が権利利益の救済を求めるためにある行政不服審査法を悪用して、防衛省が仲間内の国交省に「不服」を申し立てて、認めさせるというデタラメぶり。つい半月前に沖縄知事選で県民が示した民意を完全に無視して、「沖縄に寄り添う」ときれいごとを口にしつつ、米軍のための辺野古新基地建設に突き進む政権。これが、安倍首相が言うところの“美しい国”の姿なのだ。吐きそうになる。枕はここまで。

 旭川市長選挙が四日、告示された。立候補したのは二人。現職の西川将人(49)候補に、新人の今津寛介(41)候補が挑む。昨日(五日)から、期日前投票が始まっているから、すでに投票を済ませた読者もいるかもしれない。

 前号で書いたように、あさひかわ新聞は独自に「市長選挙 模擬投票」を実施した。発泡スチロールの小さな投票箱と、二人のどちらかにチェックをしてもらう投票用紙を作って、十月二十五日から十一月一日まで、出合った有権者に投票していただいた。職業や業界、地域が出来るだけ偏らないように投票者の選択に配慮したが、二十歳以下と七十五歳以上の方が少なかったか。投票総数は八十三票。目標の百票に少し足りなかった。

 さて、結果は。「もしや」と思い、市選挙管理委員会に「公表して問題ありませんか」と問い合わせた。担当の女性職員が調べてくれて、その回答。

 ――公職選挙法第百三十八条の三に、「何人も、選挙に関し、公職に就くべき者を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない」とあって、第二百四十二条の二には、「第百三十八条の三の規定に違反して人気投票の経過又は結果を公表した者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する」とあります。工藤さんが自分のコラムで書いたとしても、公職選挙法違反になるのではないかと思われます。どの程度ファジーに書いたら許されるかですか? それは私どもでは判断できません。

 ムムムである。手が後ろに回るような行為はやめよう。模擬投票の結果は、かなりの接戦になることを示している、とだけ言っておく。ほとんどの方が、投票の後、話をしたがった。少なくても、私が歩き回った範囲では、関心は低くなかった。天候にも左右されるだろうし、告示後の両陣営の働きかけにもよるが、投票率はそれほど下がらないかもしれない。そう祈ろう。参考のために、投票してくれた方の何人かの話を紹介する。

 「今津さんがどんな人か分からないし、経歴を見ると、国会議員の秘書しか職業を経験していないから、市長としての適格性みたいなものも不明ですよね。でも、十二年間市長だった西川さんは、そろそろ代わった方が良いと思う。だから今津さんに入れました。とにかく停滞感というか、閉そく感というか、どんよりした旭川の空気を変えてほしい」

 「西川さん、間違いないんでしょう? 大丈夫なんでしょう? お父さんが(衆院選北海道六区)で大差をつけられて落選して、しかも士別の人(佐々木隆博代議士)に旭川で負けて、その息子が勝つなんてあり得ないでしょ。投票には行くと思うよ。棄権するかもしれないけど、ハハハ」

 「市役所の新庁舎だけが争点だと言われていて、何となく違う気がするんです。今津さんは新人だから、思い切ったことが言えるし、乱暴な話もできるでしょ。もし当選したら、土建業界がバックにいる今津さんが、公約の『市庁舎は白紙に』を守れるかどうか、疑問だと思う。一方の西川さんは現職だから、現実に政策を進めてきている。夢みたいな話はできませんよ。積極的に西川さんに投票するわけじゃないけど、消去法で西川さんかな…」

(工藤 稔)

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